EmiDebu

英国王のスピーチのEmiDebuのレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
4.5
またも俺は映画の面白さに気付かされた。そうだ、俺が映画を観るようになったキッカケはこういうものだ。一生体験しえないリアリティのある誰かの人生の追体験。今まで見聞きしなかっただけで確実に存在する、又は存在した誰かの人生。俺の映画への渇望は詰まる所そこにあるように思う。

なんだこれ!面白すぎる。いや、面白いのは知ってたんだ。下らないと思うけどさまざまな賞レースで受賞を重ねた今作はその当時注目の的で、そんなことは嫌でも知ってた。ただ、個人的な俺自身に即した話であるようにも思えたから感動は殊更ではない。

といっても俺が吃音なわけではなくて、この24年ずっと「話すこと」「伝えること」に大きな関心を置いてきた。気づけばトークライブに立ち話すまでになった。緊張こそすれ吃ることはなかったがもっとも、ここで描かれるのはそんなレベル話じゃない。第二次世界大戦の勃発を告げる世界を変えるスピーチだ。

たった1つのスピーチがゴールにあるわけだが、そのために用意された2時間は全く飽きさせない。ジョージ6世という男の歪んだ生い立ち、王としての立場、王族の暮らし。もちろんこれらが全てではないと思うし多少の脚色はあるだろうが1つのスピーチを描く為に広げた裾野がどれも興味深く、これこそ普通なら体験できない人生の追体験と思えた所以だ。

2時間に近い尺も、この荘厳たるロケーションも全ては1つのスピーチのために用意された贅沢すぎる前フリだ。そしてなによりも歴史を読み解くようでいてとても面白いストーリーでした。
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