すずり

エデンの東のすずりのレビュー・感想・評価

エデンの東(1954年製作の映画)
4.4
【受賞】
第28回アカデミー賞-助演女優賞


【概略】
1917年、米国:カリフォルニア。

親子で農夫を営むトラスク家の次男:キャルは、父のアダムが品行方正な兄のアロンのことばかりを愛していると感じており、常に寂しさを心に秘めていた。

そんな中、彼は少し離れたモントレーの街で死んだはずの母親と思われる女性を見つけ、後をつけてみたがあえなく追い返されてしまう。
今度は父に母の所在を尋ねてみるものの、父にも簡単にはぐらかされてしまった。

どうにかして母親に会いたいと画策する彼だったが、そんな中で父親が事業に失敗して大きな損害を出してしまい...

・・・

【講評】
本作はジョン・スタインベック原作の同名小説(未読)の映画化作品です。
内容は一部修正が入っています。

また、本作と言えば、なんと言っても24歳という若さでこの世を去った天才的俳優:ジェームズ・ディーンが初主演ながらオスカーにノミネートされた事が有名ですね。
本作で彼が見せてくれる、鬱屈とした青年の演技は今の時代でも非常に目を見張るものがあります。
ただ写っているだけで絵になる俳優なのに、その心の機微まで見えて透けるような自然な演技は、見事の一言に尽きます。
本当に、死が惜しい俳優の1人です。

そして、内容について。
題名からも分かる様に、本作は旧約聖書のカインとアベルの逸話がモチーフとなっており、親(主・ヤハウェ)の愛を切望する子(特にカイン)の苦悩・確執について描いた作品になっています。

兄であるアロンは父譲りの正しさを持った品行方正な青年として描かれており、それと対比的にキャルは母譲りの強かさを持っているように、それぞれ描かれています。
母の面影を感じるためか、アロンばかりを愛しキャルを遠ざけてしまう父親。
この愛を巡った親子関係の物語が、本作の大きな流れです。

いつの時代、いつの国を切り取っても親子関係という普遍的なテーマは多くの人に共通しており、それゆえに私達の心を強く揺さぶる事ができるテーマの1つです。
本作は、登場人物たちの心の機微の描写が本当に素晴らしく、親子という関係が持つ複雑な関係性を赤裸々に映し出しています。

そして、父のベッドサイドで迎えるラストシーン。
キャルに許しが与えられる素晴らしい名シーンですが、
観ていると、何故だか自然に涙が出てきます。
理屈でもなく、感動でもない。
本当に不思議な涙が頬を伝いました。

所謂名作を観ていると、たまにそんな不思議な事が起こります。
これだから映画は辞められないですね。


【総括】
愛情を感じたい孤独な青年と、母親の面影を遠ざけたい父親との、愛の確執を巡る物語。
ジェームズ・ディーンがマジでカッコいいです。
すずり

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