すずり

映画大好きポンポさんのすずりのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
4.5
【概略】
敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで製作アシスタントをしているジーン。映画に心を奪われた彼は、観た映画をすべて記憶している映画通だ。
映画を撮ることにも憧れていたが、自分には無理だと卑屈になる毎日。
だが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりに没頭する楽しさを知るのだった。
ある日、ジーンはポンポさんから次に制作する映画『MEISTER』の脚本を渡される。伝説の俳優の復帰作にして、頭がしびれるほど興奮する内容。大ヒットを確信するが……なんと、監督に指名されたのはCMが評価されたジーンだった! 
ポンポさんの目利きにかなった新人女優をヒロインに迎え、波瀾万丈の撮影が始まろうとしていた。
(公式サイトより引用)

・・・

【講評】
本作は公開当日に劇場に観に行きましたが、当時多忙であったため文章がまとまらず泣く泣く感想未記録のままでした。
久しぶりに本作を鑑賞したためようやく感想を記せます。


私は元より人間プラモさん作の原作のファンで、本作公開以前より刊行されていたシリーズは全て拝読していました。

そんな原作ファンの期待と不安がないまぜになった心境で恐る恐る映画館へ足を運んだわけですが・・・
もうほんっっっっっとに200点満点、いやそれ以上の映画化で大興奮でした!!!!

原作は「クリエイターとして必要な資質」=「社会から切り離された個人の内面世界の深さ」へ焦点を当てたことや、本来地味でスポットライトの当たり難い編集作業というものを取り上げたことからクリエイター界隈で話題を呼んだpixiv漫画だったわけですが、
映画版ではそのテーマをさらに掘り下げつつ、余りにも完成度の高い追加シナリオで見事な補完がなされています。
そもそも原作には(1作目では)追加撮影のくだりやアランくん自体が存在しないわけなんですが、その事実を忘れてしまうほどに素晴らしい脚本であったと思います。
人間プラモさんを交えて推敲を重ねたとの本作ですが、まさに会心の脚本に仕上がっています。

また、映像の鮮やかも素晴らしく、魅力あふれるキャラクターたちが色彩豊かな画面の中を躍動しているものも原作ファンとしては大感動でした。
特に作中作である『MEISTER』が面白さの説得力を持って1つの映画に仕立て上げられているところが本当に素晴らしいです。
作中作が面白そうな作品は名作とはよく言ったものですが、媒体が漫画から映画になったことでマーティンの俳優として実力であったり、ナタリーが振り返るシーンの印象などが視覚的に分かりやすくなっており、グッと面白さの説得力が増していますね。

そしてなんといっても本作が『90分』の尺で綺麗に収まっている所は公開前から予想していましたが、その演出はまさに鳥肌ものでした。
本作は関係各者による原作へのリスペクトと愛で生み出された産物であることが容易に想像できます。

続編が待ち遠しくて堪りません。
予定がかなうのであればまた公開当日に喜び勇んで観に行こうと思います。


・・・

【総括】
何かを成すためには何かを犠牲にする必要がある。
そんなクリエイター達の矜持を描いた、映画を題材にした群像劇です。
90分で終わる映画が観たい方に是非。
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