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グラン・トリノのぷのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
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イーストウッドの思想が顕著に表れてる作品だと思う。
現代を、ポリコレ棒を振りかざす軟弱な時代だと苦言を呈するイーストウッドが、保守的なおじさんを演じる本作品。
本作品の制作段階でもポリコレ的にどうなのかと周りに問われたとのこと。

しかし保守といえども、イーストウッドは移民に対して差別的なのではない。作中で描かれるように、東洋系の移民への理解を図ろうとしている。他にも、作中の汚い言葉の使用例にユダヤ、ブラックなどがあるが、そういった言葉を自由に使えた上で他の人とコミュニケーションを図りたいということだろう。
ポリコレに捉われた中立的な言葉では、真の意味での「友達」にはなれないと考えているのではないか。

『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』に続いて、本作では、イーストウッドは、朝鮮戦争での戦闘経験があるおじさん役を演じている。人を傷つけること、人助けをすること、が本作ではしばしば描かれている、端的に言えば勧善懲悪がテーマ。
軟弱な時代とともに、「強さ」とはなんであるかを描いている。
『パーフェクトワールド』にも通じるところがある、強い男。
また、理不尽な暴力に対して、死をもって最後を迎えるという点は、『ミリオンダラーベイビー 』でも描かれている。

逞しくも、最後を悲劇的に迎える人間の生き様を描くのが本当に上手い。
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