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グラン・トリノのRingRingLoveのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.4
どうしたらこんな映画が作れるのでしょう
多くを語らないクリントの本領を見た気がする
引き際の美学

クリント演じるウォルトは、朝鮮戦争帰還兵
徴兵された際多くの仲間たちを失い、また、多くの住民たちを戦争という名のもと虐殺した過去を持つ
彼が頑固な「偏屈じじい」になっていった原因のひとつにこのトラウマがあり、これが物語を動かす大きな鍵になっている

この物語は、ウォルトとタオ、若い神父たちとの関係が横軸なら、グラン・トリノにシンボル化されている70年代やもっと遡って朝鮮戦争時の時代の流れは縦軸となっている
縦軸を生きてきたウォルトは、もう自分の生きる時代は終わったと思っていたはずだった
けれど横軸と縦軸が交わったとき、神は死に詳しかったウォルトに生を教えたはずで、それは長年懺悔を拒んでいたウォルトが教会で若い神父に胸中を吐露するシーンに集約されている
無意味と思われていた人生に光を与え、偏狭だった魂はやっと救われた
人生に「遅すぎる」ということはなかったのだ
そのウォルトが最期に出来ることは、横軸の人々にみずからが学んだ生と死を教えることではなかっただろうか

この映画が公開された当時、こんなキャッチコピーが冠されていた

『俺は迷っていた、人生の締めくくりを
少年は知らなかった、人生の始め方を』


エンディングは、見晴らしのよい海岸通り
タオの運転するグラン・トリノが軽快に走っていく
この開放感は、あるいはウォルトの心象風景でもあったのではないか
心地よい風にいつまでも吹かれていたいような余韻に包まれるラストだった
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