半兵衛

蛇皮の服を着た男の半兵衛のレビュー・感想・評価

蛇皮の服を着た男(1960年製作の映画)
4.2
シドニー・ルメットとテネシー・ウィリアムズによる、流れ者を通してアメリカ南部の閉塞した社会で身を縮こまらせて生きる人間たちのどん詰まりな人生がこれでもかと展開して終わる頃には身も心もどんよりとした気分に。あまりにも重苦しすぎて二度と見たくはないけれど、見終わったあとの深い余韻が半端ない長編小説のような傑作。

流れた先で次々と女をたらしこむ寡黙な色男をマーロン・ブランドが好演、タイトルにもなっている蛇皮の服をナチュラルに着こなし、マッチョな肉体とイケメンな顔立ちが半端ないセクシーさを醸し出し女性を次々と虜にする設定に説得力をもたらす。

ブランドと関係を結ぶ店の経営者の中年女性アンナ・マニャーニの重量級な演技も凄いけれど、正直言ってブランドのナチュラルな演技と全く噛み合っていない。ただそれが違う方向を向いて生きている二人のキャラクターとマッチし、妙な緊張感を作品に与えているのも事実。

元が演劇だからかやけに一つ一つの場面が長く、時折映画のリズムを削いでいる気もするけれど車という道具を使って映画的な空間を構築して演劇臭を回避しているのが上手い。冒頭ブランドがボロ車で雨中を走る場面で主人公の状況を感覚で伝え、中盤ジョアン・ウッドワードが車で暴走することで彼女のどうしようもない心境を画で語らせる。

よそ者や黒人への差別は直接画面に出さないが、登場人物たちが間接的に語ることで嫌な状況をじわっと伝える演出が巧み。そしてそれが後半の自警団によるインパクトのあるリンチに繋がるのも見事。火事→水による消火活動と一見なんでもない流れのなかで主人公たちを巧妙に暴行し始末する自警団の半端ない怖さ。

よそ者に対する地元民の偏見やその結末といい、どことなく『イージー・ライダー』に共通するものを感じる(当のデニス・ホッパーは『乱暴者』にインスパイアされて『イージー・ライダー』を製作したようだが)。
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