えいこ

機動警察パトレイバー2 the Movieのえいこのレビュー・感想・評価

4.6
パトレイバーの設定だが、人物の画が1とは随分異なり、より大人のための作品になっている。

本作には特車二課のメンバーはあまり登場せず、おもに後藤と南雲の物語。主軸となる物語は、ポリティカルサスペンス。自衛隊、警察相互の牽制や駆け引き、政府の無能と無責任。挑発と啓発。次々と起こる危機に引き込まれる。繁栄と寂寥が交じり合う東京の街がこれ以上ないリアルさで描かれ、迫力と繊細さを併せ持つ音の効果も相まって臨場感が半端ない。実写のようなカメラワーク、魚眼レンズのようなカット、メカニックの美しさ、繊細で儚げな闇や雪の描写、モノローグの多い台詞…まさに押井監督らしさ全開。

不正義の平和と正義の戦争。荒川と後藤の対話は、今の時代にも重く響く。公開以降に、我々は地下鉄サリン事件、9.11を目撃する。分断や格差。利己主義や不寛容。見えないところで戦争は続いている。2.26事件を思わせる雪の朝の蜂起。我々の足元の平和は、思いのほか不安定なことに気づく。使命感で結集する特車二課の絆と後藤をはじめとするメンバーの人間味が、虚無感を振りはらい、未来へのわずかな希望を感じさせ、バランスを保っている。

攻殻機動隊へつながる世界観を堪能。竹中直人の声にはちょっと驚き。
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