ホーガン

エクソシスト/ディレクターズ・カット版のホーガンのレビュー・感想・評価

4.5
「エクソシスト3」をトラウマ映画としてあげる方も多いようだが、それを見た記憶が全く無い。「エクソシスト」は誰もが認める傑作だが、「エクソシスト2」はイナゴしか憶えていない。では久しぶりに本シリーズを見直そうと思い立ってまずは一作目から。鑑賞したのは劇場版から10分長いディレクターズカット版。リーガンのスパイダーウォークが登場するバージョンね。

後の悪魔祓い映画の様式を決定付けた金字塔。キリスト教における実際の悪魔祓いがどのように行われるのかは知らないが、ホラー映画のキリスト教圏における悪魔や悪霊の払い方は大体本作と同じとなる。なお、日本公開当時はホラー映画という言葉は使われておらず、本作や「オーメン」などの悪魔が題材の映画はオカルト映画と呼ばれていた。特に本作の大ヒットでオカルト映画が市民権を得たと言える。

本作の最も優れているのは、最後まで悪魔という存在を明確にはせず、精神疾患の可能性を残すことで現代的なリアルな恐怖を演出しているところであろう。序盤のリーガンの医学的な検査は痛々しく、悪魔に憑かれた後も最後までリーガンの衰弱が痛ましく、病的な衰弱を想像させる。これは誰もが原因不明な疾病に罹りうる恐怖を描いたのであろう。この恐怖は破傷風に罹った少女を描いた「震える舌」にも通じる。あらためて再鑑賞してみると、カラス神父が聖水と偽った水道水で苦しみ、また悪魔パズズという名もリーガンは最後まで名乗っていない。首が回ったり、体が宙に浮いたり、あるいは各種ポルターガイスト現象を除けば、いずれも精神疾患でも説明が付く。

計算されたホラー演出も素晴らしい。サブリミナル効果とも言われた不気味な男の顔の演出も、サブリミナル効果があるか否かを置いておいたとしても不気味な演出で効果的だ。ポルターガイスト現象で迫る家具のシーンもそのカメラワークが秀逸であることが分かる。
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