あでゆ

時をかける少女のあでゆのレビュー・感想・評価

時をかける少女(2006年製作の映画)
4.0
◆Story
高校2年生の紺野真琴は、自転車事故をきっかけに、時間を跳躍する能力を持ってしまう。その能力のことを叔母の芳山和子に相談すると、それは“タイムリープ”といい、記憶の確かな過去に飛べる能力だという。半信半疑の真琴だが、日常の些細な不満やストレス解消などのため、むやみやたらに能力を乱用しだすと、その能力に魅入られてしまう。そんな中、真琴はいつも一緒にいた3人の親友の一人、千昭に告白をされる。

◆Infomation
筒井康隆の名作『時をかける少女』を、映画、TVドラマ、リメイクを経て、新たな構想で製作した劇場用アニメーション。監督は『ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』の細田守。声の出演は約200名超のオーディションで選ばれたヒロイン・紺野真琴役の仲里依紗をはじめ、『蝉しぐれ』の石田卓也が声優に挑戦するなどフレッシュな面々が集結した。恋に臆病な17歳の少女がタイムリープをする設定はそのままに、新たに用意された結末など見どころが満載。

◆Review
原作から20年後の未来を描く形で、基本要素は抑えつつもほとんどオリジナルの展開を中心に据えた本作。
大まかなストーリーは覚えていたものの、改めて見てもうまくまとまっていてそれなりに感動できるというのは不朽の名作と言わざるを得ない。

真琴がまるで阿呆で、力を手に入れた時にやることがカラオケを何周もするというのがこのキャラクターの性格や知能すべてを体現しているのがよい。
本来であれば一瞬にして過ぎ去ってしまう青春という期間を幾度となく繰り返すことの価値に比べれば、金や名誉などのあらゆるものは取るに足らないものなのでしょう。
そうした価値観を持っている子が何度も青春を繰り返しているうちに、気がつくと本人の中で不可逆な成長を遂げてしまい、それによって最終的に青春に別れを告げざるを得ない事態へと行き着いてしまうという物語の軸は、実はどんな人の心の中にもかつて起きていたことで、だからこそ誰にとっても響くところがあるのだろうと思う。

いいアニメはビジュアルの質も高い。
ジブリ作品よりも繊細でリアリスティックでありながら、新海誠作品ほど線が細くならない絵のバランスもちょうど良く、真琴が思いっきり転けている様子も気持ちいいしっかりとしたアニメーションで見せてくれるために、爽快感と歓びがあった。
真琴が時間を巻き戻す際は、青春アニメとは不相応な真っ白の背景のなかで駆動するSF的な機械によって演出され、「普通にはありえないこと」の説得力を担保している。
この辺りのSF描写のセンスは『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』から生み出され、『サマーウォーズ』に引き継がれているようにも思う。

終盤に向けて印象的なカットも多く、特にラストで千昭を画面外に追いやることで別れを表現する場面は本作の白眉といえるだろう。
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