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リトル・ダンサーのjustaperfectdayのレビュー・感想・評価

リトル・ダンサー(2000年製作の映画)
4.6
T.Rex- Cosmic Dancer / Ride A White Swanで、壁紙の前で飛び跳ねるビリー・エリオット
胸に熱く迫るTHE JAM - Town Called Maliceで、タップダンスを踊るビリー・エリオット!からの雪景色(いつの間にかコート!クリスマスへと時間の経過を描く編集も素晴らしい)
そんな名シーン・名シークエンスに並ぶ感動は、

純粋さと情熱で現実に立ち向かい夢に向かうビリーの姿や師弟愛、マイケルとの友情やそれぞれの葛藤も描かれてはいるけれど、エリオット家の家族愛、特に父親と息子の物語。

エリオット家の、ちょっとした仕草や表情にフフッと思わず微笑むあたたかさが描かれていて、
終盤、声を上げて笑うようになったお父さん、涙ぐむお父さんに、グッと熱いものを感じます。
やはり、父親と息子の物語として観てしまう。

アメリカ映画に多い、派手さや洗練、カラッと乾いた感じやストレートな熱さとは違う、湿っぽく不器用で、ときには少し野暮ったくても等身大の親近感を感じる あたたかい表現で人間味あふれる英国映画らしい心温まる名作。
内向的で不器用で心あたたかい人たちを題材に、そんな人間らしい人たちがあたたかな目線で撮ったことがひしひしと伝わります。

そして、エンドクレジットが、急にテイストが違いすぎる2000年感ありありな選曲でなんとも言えない余韻になるのもご愛嬌。

ただ、登場人物の葛藤や苦しみの描写はあくまで軽く、行間を読む・想像で補う部分も多いので、現代日本の若い人たちに理解し難い英国階級社会や社会背景を理解してから観てほしいなぁ、と思います。

サッチャー政権下で冷遇されていたイングランド北東部、炭鉱閉鎖に揺れるダラムの炭鉱町。
代々、炭鉱夫として働いてきた人たち「男なら男らしくフットボール(サッカー)・ボクシング・レスリングやって、炭鉱で働くんだ!」という価値観で生きてきた人たちが大半を占めていたはずの町

昭和57年京都生まれ、滋賀の田舎育ち、英国留学4年間の男性として、お父さんにもお兄さんにもビリー少年にも共感できる部分が非常に多いし、
家父長制度・父権制と頑固親父・封建主義的な親父、男はかくあるべき・女はかくあるべきを実体験して理解できる反面、現代日本の若い人たちが理解し難い映画ではあるのかも。

でも、そこで理解・共感できない映画としてしまうには、あまりにも勿体ない英国映画史に残る名作。

そう思うと、予告編・あらすじを一切見ずに観たい自身も、社会背景・文化背景をある程度頭に入れてから今後の映画鑑賞に臨みたい。
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