昔バレエ習ってたから懐かしかった。
白鳥の湖の曲が心に染み渡る。
時間の経過の表現が好きだった。
中盤で冬になるところと、最後の電車がホームに到着するシーン。
流れるように幾月か、また14年間を過ぎ去らせるのが上手い。
ジェンダーの問題が大きく絡んでいる。
「バレエは女がするものだ、男はボクシングとかレスリングとかをするんだ」と言われながらも、心惹かれたバレエに熱中していくビリーの強さが好き。
クリスマスパーティーの日に父が流す涙に心揺さぶられる。
この場面でビリー、祖母、父だけが画面に直接入っていて、兄トニーだけ鏡に映った姿しか見えないというのは、父の心がストライキ一本の兄から離れ、家族の方に近付いたという表現かと感じる。
スト破りのバスのシーンが心に残った。
トニーに姿を見られた後に生卵が真横に飛んでくるのは、父親にとってはそれほどの屈辱だという暗示だと思った。
「ビリーには未来がある」に再度心揺さぶられる。
全体的にお父さんが素敵だった。
家族のために奔走する姿もそうだけど、バレエ学校でずっとそわそわしっぱなしなのがもう。
オーディションの結果が届いて家族全員リビングにスタンバイするのも愛を感じる。
あのシーンでただ1人、食器洗いという役割を見つけてずっとリビングにさりげなくいたトニーは賢いと思う。
あとは友達のマイケルが好き。
ジェンダーのテーマはビリーのバレエが中心的に描かれているけど、マイケルもまた別のジェンダーの縛りに苦しめられる人の姿を体現したもので胸が締め付けられた。
LGBTQの問題が注目される今でならまだ生きやすかっただろうと思うけど、この当時はそうはいかなかっただろう。
けど最後のシーンを見る限り、自分の好きな生き方ができているようで安心した。
ビリーの見送りのシーンでのトニーの姿が印象的だった。
今まではスト破りのバスを下から攻撃していたけど、このシーンではビリーを送り出すためにバスを見上げていて、構図としては同じような感じなのにまったく違った空気が流れている。
トニーが最後にかけた言葉がビリーに届かなかったのは苦しいけど、何となく、ビリーには伝わっているんじゃないかと感じる。
ラストの公演の力強さが素敵。
他の出演者がみんな舞台を覗こうとしている辺り、ビリーはかなり力をつけて夢を実現させたんだなと胸が温かくなる。