BOB

エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事のBOBのレビュー・感想・評価

3.8
マーティン・スコセッシ監督の歴史ロマンスドラマ。

1870年代のニューヨーク上流社会。婚約者のいる若い弁護士が、婚約者の従姉にあたる既婚女性と恋に落ちる。🌹

"You gave me my first glimpse of a real life. Then you asked me to go on with the false one. No one can endure that."
"I'm enduring it."

どのサブスクにもなくて困っていた作品。やっと鑑賞。

スコセッシ監督らしい歴史ロマンス映画。映像は豪華で美しく、ストーリーは奥深く、役者の演技は素晴らしかった。一番興味深かったのは、"文芸映画の皮を被ったギャング映画"だったこと。

ニューヨーク上流社会を生きる金持ちプレイボーイの不倫ドラマかと思っていたら、自分を偽って生きなければならないことに窮屈さを覚える男の内省的なドラマであった。更には、スコセッシ監督の恩師マイケル・パウエル監督作品を想わせる、フィルム・ノワール的な人怖スリラーでもあった。

上流社会は、一切手を汚さない"礼儀正しき殺人集団"だった。鑑賞前は『アリスの恋』路線の作品だと想像していたが、本質的には『グッドフェローズ』『カジノ』『アイリッシュマン』といったギャング映画の方に近かった。共通点は、"掟を破った者には制裁が加えられる"ということで、ギャングなら命、上流社会なら名声や社会的地位が容赦なく奪われる。スコセッシ・ギャング映画を肉体的ヴァイオレンス映画とするならば、本作は精神的ヴァイオレンス映画と言えると思う。

メイン俳優3人のキャスティングが完璧。ダニエル・デイ=ルイスの繊細な紳士感、ミシェル・ファイファーの自由奔放な金髪美女感、ウィノナ・ライダーの純真無垢な聖女感が、俳優の名演も相まって見事にハマっていた。特に、女優二人は、役者の持つイメージがストーリーにも大きく関わっていた。終盤、背筋が凍りつくような恐怖シーンがあった。

様々な芸術の形を取り込んだ映画。示唆的に絵画や演劇シーンが挿し込まれているだけでなく、小説のようにナレーションが用いたり、演劇のようにスポットライトが当てられていたり、絵画のような構図で風景が撮影されたりしていた。

思わず唸らされる映画技巧のオンパレード。舞踏会シーンの長回しキャラクター紹介。葉巻や料理、万年筆などのディゾルブ。ミュートとアイリスショットで二人だけの世界を演出。エレンとメイが第四の壁を越える。

エレンのインテリアコレクションの中に、鶴が描かれた日本の金屏風もあった。

ジョナサン・プライスがちょろっと出てきた。強烈な個性を持つマダム役は、『ハリポタ』スプラウト先生役のミリアム・マーゴリーズ。

270
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