囚人13号

崖の上のポニョの囚人13号のレビュー・感想・評価

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)
4.0
ジブリは数年間隔を開けると全く違う映画になるので、こんなグロテスクだったのかと気持ちを新たにする。人間へ進化途中のポニョの半魚人的なビジュアルは(一番近いのがオオトリ様)大量生産型。
ある意味クライマックスと言える薬水の力でポニョが完全に人間となる瞬間、醸成部屋へ洪水と共に流れ込み音(劇伴)も遮断されて作画が線まで退化するシーンは駿が好んで描く水の神秘性と瞬間的な冥界で、無論ここも千と千尋にて川の神を接客する際に高精度で反復される。

水を単なるトラウマや死として処理することなく、ジブリにおいては寧ろ記憶的波止場/生の肯定としてさえ描かれる。『おおかみこどもの雨と雪』とかは好きなんだけど、細田守にはこの感覚が欠落しているように思う。

全てのジブリ作品は根底で共鳴し合いながら途轍もなく巨大な、輪郭さえ掴めない一つの何かを呈していて『君たちはどう生きるか』はそれをあくまで表層的なイメージ次元でなぞったに過ぎないというのは僕の勝手な持論ですけども…。

トトロ以降は親子すらまともに取り上げてこなかった駿ジブリにおいて名前(=アイデンティティ)で呼び合うことは唯一の存在確認となる。
囚人13号

囚人13号