環奈

浮草の環奈のレビュー・感想・評価

浮草(1959年製作の映画)
4.8
大傑作 小津のベスト
色彩と影の映画
これまでの小津らしさを感じつつも、大映らしい派手さもあって、特殊な一本と感じた
激エモ

完全に影に覆われた暗黒シルエットの川口浩からまずカッコ良すぎるけど、「震えとんの?」からの闇から誘き出して胸に手当てさせてキスする若尾文子
「これで世界が変わる」っていう瞬間として完璧過ぎる、ちゃんと世界変わるし
ここの影の意味合いも後の展開を考えると上手い

一夜を共にしたあと近場の宿での、使用済みティッシュの配列すらこだわってて最早狂ってる
小競り合いのあとの廊下ショット→列車の音→もう既にキスしてるショット→美しすぎる机(使用済みティッシュも含めて)
まじでエモすぎてやばい
1回目と2回目のキスを、向かい合ってキスするまでを描いて、3回目は唐突にもう既にキス状態ショット、天才
毎回キスさせて毎回肩に手を回す若尾文子は悪魔的だし

そもそも小津の映画でキスシーンて珍しいけどどれも凄いよね

京マチ子と中村鴈治郎、大雨に赤い傘を挟んで真正面画角から喧嘩するシーンも凄かった
あんだけ正面から捉えたカットも珍しい

終盤のあの修羅場から、たったワンシーン挟むだけでこんなにも心温まる着地に持ってくのは完全に小津
環奈

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