小津映画をカラーでみるとまた印象が違う。意外にカラフルなんだなって。舞台の幕とか。
とにかく京マチ子演じる現妻の嫉妬と、それに伴って一座のべっぴんさんに浮気相手との子どもを誘惑させるっていう悪事と、でも怒られてやっぱりやり直そうという、この一連の流れに大変自然な妻の夫に対する愛を感じる。これはうまい。
べっぴんさんと息子の最初こそ邪な気持ちだったけど、両方愛し合ってしまう流れもよくて、
その二つの流れがあるからこそ、一座解散という事件のあとに、駆け落ちする息子と息子にだけは自分とは違って勉強してまともになってほしいという父のコンフリクトの激突、さらには何年に一度しか会えない父の思いなどが浮かび上がり劇的になってる。
しかしここまではまあそうかくらいだったんだけど、最後の駅のシーンで、観ながらどうなったんだろうと気に病んでた京マチ子が出てきて、無理やりたばこに火をつけるところはもう最高だった。
この映画はやはり現妻のものだった。
誰も一人ぼっちにならなくてよかった。
一座の、涙流してたおじいちゃんだけが心配。
京マチ子も若尾文子ももちろん美しいけど、個人的には、床屋の女の子役の野添ひとみさんが広瀬アリスに似てて大好き。