Jeffrey

ヴェネツィア時代の彼女の名前のJeffreyのレビュー・感想・評価

3.5
「ヴェネツィア時代の彼女の名前」

冒頭、割れた窓の固定ショット。6枚の窓と奥行きのある鏡、扉、廊下。手持ちカメラの流暢な映像、建物と自然、密閉空間から解放された映像美、断片的な引用、日没から始まり日没で終わる、廃墟的。今、ブローニュの森へ続く道…本作は前年の映画「インディア・ソング」の続編で、1976年にフランスの女流作家のマルグリット・デュラスが監督した上流社会に蔓延する愛の模様を描いた前作に対し、本作はその残骸である廃墟となったフランス大使館を背景に、大使夫人の悲恋が描かれて行く内容である。こちらもようやく国内で初BD化され、同時収録の前作とともに初鑑賞したが退屈の一言。ストローブも退屈で難しくて見るのが大変だったが、この作品もかなり強者である。前作の「インディアン・ソング」と同様に同じ録音を使った音声が流れたり、巨大な鏡は出てこないも、複数の鏡が現れたりしてくる。そしてロベール・ブレッソンの作品にもあるブローニュの森が出てくる。荒廃した巨大な建物が舞台となっている。

正直前作の続編と言っても過言ではない日没から始まり日没で終わると言う作品なので連続してみるのが良い。実際に今回購入したブルーレイでは1枚の中にこの2作品が同時収録されていた。基本的に「インディアン・ソング」と変わらず、断片的に引用した前衛的な作品で、音楽やダンス、根源的な虚無主義が現れている映画だ。それと前作よりもカメラワークが流暢になり、縦移動横移動が印象的だった。それと割れたガラス窓などを、どこかしらタルコフスキーの非現実的な神秘主義を彷仏とさせるファンタジックな場面でもあった。基本的にデュラスは固定ショットと編集作業が好きなようで、それから割れた窓である。この作品には少なくても6枚の窓が現れているし、手持ちカメラでも捉えられたり、鳥のシークエンス、長い廊下のショット並びに鏡、窓、扉、廊下と言う奥行きのあるショットが垣間見れた。前作と違って人物が映り込まなく、基本的には物ばかりであった。
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