囚人13号

HANA-BIの囚人13号のレビュー・感想・評価

HANA-BI(1997年製作の映画)
4.9
凡ゆる点から集大成として位置付けられるべきだろうし、絵画は映画祭への目配せどころか北野映画が完全に芸術となった(なってしまった)何よりの証左である。

他の方の指摘通り劇伴もカットも模範から大きく逸れることはないし豪華なクレーンショット然り、最早そこには処女作の発作的な衝動も『ソナチネ』のような華々しさと脆さの同居も見いだせないからこそ「成熟」を感じる。

もちろん観客に受けたから妥協と言うわけではないし、何なら暴力の差別化もここで完全に自分のものにしてると思う。
発砲は正面から標的を貫き、殴打は反応を遅らせ若干ズラしたりしてオフや間接的に処理することで、その決定的瞬間(本質)をカット間へ宿すという寧ろブレッソンに似た到達。

ただ一点カットが変わる度にそれを意識させられすぎるというか、省略の加速が観客を一歩引いた鳥瞰的な視座に置いやってしまいかねないかなとも。

四季を駆け抜け、武の「ちょっと待ってくれ」でまた季節が飛躍するラストシーンは恐らく今までで一番澄んだ青空と海が出現するが、逃避行も花火と発砲音の往来も全てがここで綺麗に片付けられる。朝方に観てよかった
囚人13号

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