上海十月

香華 前後篇の上海十月のレビュー・感想・評価

香華 前後篇(1964年製作の映画)
4.5
岡田菜莉子と乙羽信子の会話がどつき漫才のようだ。昔見た記憶があるのですが岡田菜莉子が加藤剛にすがりついていく移動撮影のシーンが印象的でしたね。見直してみたら乙羽信子の代表作だったんだと。娘を売った先に母親が花魁でやってくるという、そんな無茶苦茶なというストーリー。その前段に田中絹代と乙羽信子の確執を描き、田中絹代に狂った役回りをさせるという木下恵介は、さすが巨匠。乙羽信子が出てくると妙に面白くなってくる。岡田菜莉子との掛け合いがキツめの漫才みたいで、真面目にみている方には悪いんだけど笑えてくる。岡田の「お母さん!」が合いの手に聞こえてくる。関東大震災のシーンや空襲のシーンは、結構特撮使って効果的だった。木下恵介は、特撮好きなんじゃないかと思いますね。「喜びも悲しみ幾年月」の灯台の光は、後に東映特撮の大御所矢島信男で「哀愁があって良かった。」と木下監督から言われたことがあると。この辺りは、黒澤明のなんでも実物みたいな考えと違いますね。客にある程度わからせるために特撮も必要と思っている合理的な監督ですね。戦前に京都に旅行して不倫相手に舞を踊っているところに空襲のせを被せてくるあたりは、シュールな木下恵介面目躍如という感じで面白かったですね。
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