ひたる

ミツバチのささやきのひたるのネタバレレビュー・内容・結末

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

午前十時の映画祭。作品の前後に町山智浩さんの解説が付いている。この解説は、製作者である監督や脚本家の方々が軍部崩壊後にインタビューで応えたものを町山さんがまとめたものである。この解説がなければ作品を1mmも理解できなかったように思う。久々に頭をフル回転させて観たから疲れた。

舞台は1940年代。当時スペインは軍による独裁政治が敷かれていた。言論統制が厳しく、政府の敵と見なされて誘拐される者や処刑される者も少なくなかった。学校の壁に飾られている写真の人物は独裁者。対して主人公アナの家に飾ってある絵画に描かれている人物は、自由を訴え軍に反抗し処刑された哲学者。

登場人物それぞれが、スペイン内の様々な立場の人を表してるのは流石に分からなかったが、「ハチ=軍の圧政に敷かれるスペインの人々」なのはわかった。窓の格子が蜂の巣と同じ六角形から成ってたり、ハチを見る人間が恐怖と一緒に同情も憶えるってのはまさに、軍部に逆らわずに手先になるしかない人々に対してのことだった。

解説によると、養蜂場を営みハチを観察する父親は、反抗の意思を挫かれ静観に努める知識階層。フランスに手紙を送り続ける母親は、平和だった頃のスペインを懐古し国外に救いを見出す人々。アナにイタズラをし、焚き火を飛び越え、猫の首を絞める姉は、軍部の非道な行為に目を背け加担する人々を表している。そして主人公のアナは軍部が崩壊した新たなスペインで人々があるべき姿、決断を他人に委ねず、現状に目を見開く人物として描かれているらしい。

アナが学校で人体模型に目を付けるのは、鑑賞後の解説と照らし合わせると、姉のイサベル他、軍に従うことに抵抗を憶えない大半の人々を、自らの意志をもって行動するアナが目を覚まさせる暗喩だろう。自ら考えて行う行動こそがスペインをより良い方向に導くっていう製作者側のメッセージに感じた。

これのリメイクに近い「パンズ・ラビリンス」はスリラー映画として元々気になっていたため、さらに興味をもった。
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