サプライズ

ミツバチのささやきのサプライズのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
3.9
興味からの優しさ

ビクトル・エリセの長編第1作にして、最も評判のいい本作。そんなわけで、今回はこれまで以上に期待していたんだけど、個人的にはのちの2作の方が好みだった。撮り方やストーリーの独自性は相変わらずで、今回もまた完璧に洗練されたカットに惚れまくっていたんだけど、語らない美学がとことん追求されていて、とにかく静か。睡眠不足の夜にみるもんじゃなかった。
巻き戻して理解し、この映画の持つ深みを感じた気がしたから、やっぱり1回じゃ噛みきれない作品なんだろうね。

主人公を演じたアナ・トレントがこの世のものとは思えないほど、美しい。大きな目で語る、繊細な演技もまた見もの。真っ直ぐで、純粋な心。当時の時代背景、映画フランケンシュタインとの出会い、そしてひとりの負傷兵がそんな彼女の心を揺れ動かす。
情報過多から物語に集中させる映画はあっても、限られた情報によって目を凝らせる映画は、今ではなかなか見られない。とても1回見ただけじゃ語れない、尊い作品。夜、その日に見た映画をコソコソと話す姉妹の姿が、どこか懐かしく、鮮明に脳裏に刻まれた。

2024-146
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