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善き人のためのソナタのmentaikosanのレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
4.5
■あらすじ
ベルリンの壁崩壊前の1984年、主人公ヴィースラーは反体制派への尋問方法などを教える教師であり、シュタージ(国家保全省)の大尉という、社会主義国家である東ドイツに忠誠を誓った男だった。
シュタージの任務の中で、ヴィースラーはドライマンという西ドイツの文化に傾倒する劇作家の監視を命じられる。
早速ドライマン宅に盗聴器を仕掛け、昼夜問わず監視するヴィースラー。しかし、ドライマンの日常を覗く内にヴィースラーの心に変化が芽生えてきて…。

■感想
とても良かった…。

実直な男、ヴィースラー。実直であるが故に社会主義国家発展のために非人道的な行いも厭わない。しかしドライマンの監視がきっかけで、出世や保身しか考えていないシュタージ上層部の内情や、国のトップの自堕落さなどを知り、果たして自分の行いは正しいのかと葛藤する。そんな中、相対する思想を持つドライマンの人間味に触れ、次第に心を動かされていく。

この心を動かされていく過程のヴィースラーが、派手な演出はないが、上手に描かれている。人恋しさに娼婦を呼んでしまったり…ドライマンのお家に忍び込んじゃったり…エレベーターで出会った子供の父親を見逃したり…。

正しい行いがいつだって報われるわけではない。
けど最後「これは私のための本だ」と言うヴィースラーの表情が、「善き人」として間違った選択はしていなかったと誇らしげに見えて、涙が止まらなかった。

是非たくさんの人に見て欲しい作品。