Ryan

善き人のためのソナタのRyanのレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
3.9
善き人のためのソナタ



ストーリー
1984年、壁崩壊前の東ベルリン。国家保安省「シュタージ」の局員は、反体制的疑いのある劇作家とその同棲相手の舞台女優を監視し、反体制の証拠を掴むよう命じられる。しかし音楽や文学を語り合い、深く愛し合う彼らの世界に共鳴した彼は、新たな人生に目覚めていく。 


主演 ウルリッヒ・ミューエ
監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク


第79回アカデミー賞外国語映画賞受賞作
心に訴えかける魂の讃美歌。
1つの人生を盗み見る事の残酷さと人々の苦悩と希望がそこにはあった。

素晴らしい作品。
余韻が終わらない。いくら頭で考えても答えが出ない。それはきっと魂に訴えかけてくる映画だから。何が人をそうさせたのか?時代が悪かった、人々もそうだった、何のために生きているのか?
歴史を変えるのは有名人ではなく、名もなき普通の人々だ。そんな彼らの物語。

目撃者への取材や記録文書のリサーチに4年の歳月を費やした今作には名もなき人々の"声"が映し出されており、人々が選んだ"選択"の代償と希望という名の"残酷"が染み渡る。
この映画を例えるなら水面だろう。
全てを吸収し余波を与える。
そのため、この映画を言葉でレビューするのは難しい。

キャラクター全員を殺すのではなく飼い殺しの様に演出していく様は見事。心情の変化を丁寧に描きつつ無駄のないそれは心音まで聞こえてきそうだ。主演のウルリッヒミューエの演技が素晴らしかった。彼が今も健在だったならばと考える。

もし気になるのであればあなたの"心"で見てほしい。
Ryan

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