ハニルくん

マイ・ブラザーのハニルくんのレビュー・感想・評価

マイ・ブラザー(2009年製作の映画)
4.1
トビー・マグワイア、ジェイク・ギレンホール、ナタリー・ポートマン主演。戦争の悲惨さと家族の愛について考えさせられるとてもいい映画だった。

米国のある家族で、兄のサムは優秀で父からも愛される幸せな妻子持ち、弟のトミーは独身で犯罪を犯して刑務所を仮釈放して帰ってくる。しかし、兄はベトナム勇士である父親の跡を継いでアフガニスタンに出征して捕虜となる。

サムの死亡が誤報として知らされ、残された妻グレースとその娘たちとトミーは互いを慰め合いながら仲良くなり、ある時、悲しみのあまり、グレースとトミーが思わずキスをすることになって、すぐに互いに後悔する。その上でサムが帰ってくる。彼は長期にわたる捕虜生活で、拷問の末に強要されて部下を殴り殺していたが、それを誰にも話すことができない。ひどいPTSDを抱えるサムは、グレースとトミーの関係を疑い、どんどん異常な行動に走る。サムは、妻子のためを思うあまりに死ぬわけに行かないとして部下を殺したのだが、その部下にも妻子がいて、自宅を訪ねてきたその妻子にも出会ってしまう。

驚いたのが、サムが戦場から戻るが否やトミーにいう「妻と寝ただろう。死んだと思ったのだからしかたない」という言葉である。彼ら兄弟の父も妻を亡くして再婚していること、途中、トミーがガールフレンドとして連れてきた女性も、自分の継父に勧められて看護婦学校に通っていると話すなど、米国では離婚や再婚が一般的だということはそうなのだろうが、あまりにも簡単過ぎるなあと思った。

結局、愛されて育って品行方正で性格もよかった兄のほうは悲惨な病を抱え、兄と比較されながら育って劣等感で悪の道を行っていた弟のほうは、すっかり家族思いのよい人間に更生する。冒頭の食卓風景と末尾のそれは兄弟の立場が完全に逆転している。しかし、結果的に兄を救ったのはその弟の愛であった。さらに、弟は姪の1人が自分のように劣等感にさいなまれていることに気づいて手を差し伸べるし、彼に劣等感を抱かせていた差別的父親も、やがて彼を認めるようになって変化する。兄に起こったことは悲劇だったが、それがあってこそ家族が互いを理解し支え合うことができるようになった。最後に、16歳から夫一筋であったサムの妻グレースも偉大だなあと思った。