もとまち

海外特派員のもとまちのレビュー・感想・評価

海外特派員(1940年製作の映画)
3.8
テンポは良いけど話の展開が緩めなので瞼の重さを感じていたら、いきなり老人の顔面に銃弾が撃ち込まれるからビックリした。見せ場のアクションになると演出が急にイキイキしだして超面白くなる映画。傘で埋め尽くされた人混みをすり抜ける追跡シーンや、風車小屋での緊迫感に満ちた隠れんぼなど、画面に迸るアイディアの豊富さが素晴らしい。ヒッチコックの手に掛かれば普通の街中も激しいアトラクションに変わってしまう。ドイツ表現主義を意識したと思しき立体感のあるセットや陰影を効かせたライティングもカッコ良い。老人が軟禁されている部屋のシーンではその特徴が顕著に現れていて、老人をジッと見つめる男たちを正面から写したあのショットは、まんまフリッツ・ラング映画のそれだった。事件が一件落着するのかと思いきや唐突に飛行機パニック映画になるラストもすごい。コックピットを突き破って溢れ出る海水、脱出しようと窓を蹴破る人々、荒波にもまれながらも、必死で飛行機の翼にしがみつく主人公たち。どうやって撮ったのかも分からないほど凄まじいスペクタクルが勢い良く展開されるのでびびった。肝心の物語がプロパガンダ的結末に行き着くのは時代的に仕方がないのかもしれないが、1940年でこんな映画を撮れるヒッチコックはやはり天才。
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