ねこたす

ブラザーフッドのねこたすのレビュー・感想・評価

ブラザーフッド(2004年製作の映画)
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これはとても良い戦争映画だ。

映画が始まって回想シーンになり、おいおいよくある戦争って嫌~ね映画かよーなんて思っていたらとんでもない。

「ブラザーフッド」のタイトルは映画を見てなるほどと思う。朝鮮戦争とそれに巻き込まれる兄弟を描いたのだ。
靴職人を目指す兄チャン・ドンゴンと頭の良い高校生の弟ウォンビン。

北朝鮮がソウルに攻め込み、幸せな生活が一変する。18歳以上の男子は徴兵される。
身体が強くない弟をどうにか戦地に送らないため必死に抵抗する兄ジンテだが、結局は二人とも連れていかれる。

ここからがすごかった。もうめちゃくちゃ。これが全く盛っていない表現なのだから。塹壕を通っていると砲撃が始まる。
死体の山、おびただしい血。さすがに人形のようだが、人が燃やされているのを見るとゲンナリする。
人の頭から湯気。燃える人人人。
脳みそも見事に吹き飛ぶ。補給も尽きかけている。
そりゃ狂う人も出てくる。

え、テグ!?と最初は驚いたが、そういえば韓国軍て最初はボコボコにやられてたんだっけ。
ある意味ヤケッパチになりながら、相手方に奇襲をかける。ここからジンテの大戦果ぶりが凄まじい。
弟を除隊させるため? 戦争を早く終わらせるため?
結婚を控えた兄を思う弟と、頭のよい弟を大学にいかせたい兄。心をうつ兄弟愛だが、いつも一緒にいようと誓う。

ひたすらに邁進する兄だが、彼の作戦で命を落とす者も出てくる。一体なんの為の作戦なのだろう。彼には帰りを待つ妻や息子がいたはずなのに…。
やがて塹壕戦から市街戦へ移っていくと、民間人の犠牲者が大量に転がっている。これまた強烈だ。だんだんとジンソクの目が血走り軍人の顔になっていく。

北の捕虜にゲームと称して殴り合いをさせる。ジンソクはついにぶちギレて自分が参加し、本気の殴り合いをする。
おいおい、遊びに何真面目になってるんだよ、と言いたげな外野だがモロに朝鮮戦争の縮図だ。

決定的に兄弟の絆が壊れるシーンがあるのだが、そこからの兄弟喧嘩がすごい。戦場の真っただ中で殴り合うのだ。
まさに、朝鮮戦争。なぜ、兄弟で殴り合うのか? それは同じ人種がなぜ殺し合いをしなければならないのか?という疑問に直結する。
前段でめちゃくちゃと言ったが、本当に何が起きているのか分からないのだ。リアルな戦争を描くならそうするべき、という考え方が一つ。
例えば、日本兵と米兵が戦っていたらすぐ分かる。人種が違うのだから。この朝鮮戦争では違う。元々は同じ国の仲間だったはずだ。その揺らぎがそのまま画になって表れている。誰が味方で誰が敵なのか…。

「保導連盟事件」でジンテは大切なものを二つも失ってしまう。頭がおかしくなってしまうには十分だ。大隊長を何度も何度も石で殴り、殺す。その怒りは主導するお上へと向けられているようだ。

もう戦争も終わろうとしているのに、最終的な領土争いで小競り合いは続く。この辺りは、『高地戦』という同じく韓国映画を合わせて観てもらいたい。

あれだけの悲惨な状況で兄を探し当てるのは、映画らしい嘘だが、まるで彼ら兄弟だけにクローズアップしている描き方に反感を覚える人がいるかもしれない。だが、それでいいのだ。その内輪さがこの戦争そのものなのだ。

兄弟の絆はとっくに壊れていたと思っていた。それでも、ひたすらに助けようとする。
そこに、彼らの朝鮮統一への希望が託されているのではないだろうか。
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