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アントニー・ガウディーのBONのレビュー・感想・評価

アントニー・ガウディー(1984年製作の映画)
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本格的に映画演出を手がける前の32歳の勅使河原監督が、スペインが生んだ天才建築家アントニー・ガウディの作品に出会い衝撃を受けた後、プライベート映画として撮影を始めるも、予算が続かず断念、24年後に改めて劇場用ドキュメンタリーとして完成させた渾身の一作。

サグラダ・ファミリアの建設過程を追ったドキュメンタリーでありながらも、バルセロナの路地や広場、活気ある市場、伝統的な舞踏の風景やガウディが訪れていたというロマネスク様式の教会建築などを織り交ぜながら、ガウディの作品世界に迫っていく。

カサ・バドリョ、カサ・ミラ、グエル邸、グエル公園など、代表作の精巧なディテールが瀬川順一のカメラによってクローズアップで舐めるように滑っていき、武満徹の抒情性を帯びた音楽で有機物のよう。

サグラダ・ファミリアに集結していく様は、カタルーニャ地方の自然や歴史や風土によって育まれたガウディの作風の集大成として圧巻の撮影。「人間の創り出すものすべては、大自然の偉大な著作に書かれている」ーアントニー・ガウディー

ヴィレッジ・ボイス紙は、本作を「情熱的なプロジェクトのようなもので、監督が何十年も前に訪れてから完成させたもので、ナレーションや説明文はほとんどなく、ガウディの最終世紀の作品のカタログが熱心にローリングされている」と評している。

台詞がほとんどない分、武満徹による美しい音楽と電子音がこの上ない程ガウディの建築物と相まってボーッと旅するような体験だっ。
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