イワシ

群衆のイワシのレビュー・感想・評価

群衆(1928年製作の映画)
5.0
大都市ニューヨークのパノラマ的景観のモンタージュは、スペクタクルそのもの。素朴なステレオタイプそのまま市民の生活に焦点を当てたこの作品のイメージは(主人公自身、そのイメージに苦しめられるのだが)たとえば『アパートの鍵貸します』のオフィスの景観に参照されたり、ラストのショーを観劇する群衆のショットはカラックス『ホーリー・モーターズ』のタイトルで引用されたり、と映画史に大きな影響を与えている(未見だが、カザン『群衆の中の一つの顔』は、この映画のラストショットをアイロニカルに参照しているのではないか?)。そして、最大の影響を受けたのが、オーソン・ウェルズではないか、というのが観た直後の個人的な感想だ。上で言及したオフィスの光景は、『審判』にもそっくりのシーンがあるが、それだけでなく、摩天楼を極端な仰角で見上げるカメラが上昇すると、そのまま画面は切り替わることなく窓ガラスを通り抜け、整然と並べられた大量のデスクとビジネスマンが……。これって、『市民ケーン』じゃん! あと、この作品が元ネタの映画って、コメディにならざるをえないような気がする。
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