sia

トゥモロー・ワールドのsiaのレビュー・感想・評価

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)
3.5
子どもが産まれなくなった世界を舞台に、奇跡的に妊娠した女性を守るため奮闘する男の姿を描いたSFディストピア映画。

ゲームの『The Last Of Us』に影響を与えた映画のひとつということですが、確かに雰囲気やキャラクターの関係性は似ている気がします。

映画としては、思ってた以上に人が死にまくるハードな作風だったので驚きました。
子どものいなくなった世界では紛争やテロが頻発しており、街は難民で溢れています。
身ごもった女性もまた不法移民の黒人であり、それゆえにその身を狙われることになるのです。
この辺の設定は示唆的でもあります。

人類が繁殖能力を失ったという設定もユニークで、世界がこれから確実に先細りしていくのが目に見えているというのはなかなか恐ろしいものがあります。

ただ、世界観自体はあまり深く掘り下げられてはいない印象です。

そもそも、子供が産まれなくなったからといって、20年かそこらでこんなに世界が荒廃するものなんでしょうか。
出生率の低下がどういう因果関係で紛争を引き起こしたのかいまいち分かりませんでした。
人口が増加したのなら難民が多発するのも分かるんだけど、逆に減ってるんですもんね。
赤ん坊が狙われる理由もなんだか少し曖昧。
物語の根幹を成す部分だから、この辺の経緯は少し説明が欲しかったな。

キャラクターも表面的な上に次々死んでいくので、テンポがいい反面感情移入はしづらいです。

それでも、残酷な世界の日常を垣間見ながらも続いていく主人公たちの旅路はスリリングで、飽きることなく楽しむことができました。

この映画では緊張感を演出するために長回しを多用しており、特に戦場のシーンからのラストは美しかったです。
原題のCHILDREN OF MEN(人類の子どもたち)が示すように、子どもこそが人類の希望であり未来であるというメッセージが視覚的にも明確に伝わってきたのがよかった。

テーマや設定に関してはもうちょっと掘り下げて欲しかったなとは感じたものの、非情な世界観とシンプルでスピード感ある展開が個人的に好みでした。

ディストピア物が好きな方にはオススメできる作品だと思います。
ついでに『The Last Of Us』も面白いゲームなので興味ある方は是非。(宣伝)
sia

sia