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記憶の棘のあのレビュー・感想・評価

記憶の棘(2004年製作の映画)
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フィクションを何の根拠もなく信じるものが、それを生きたフィクションとして演じることができる。
後半に置かれた大きな転換点までの前半部分で、見知らぬ少年が10年前に亡くなった夫であるという、名付けるとしたら「生まれ変わり」としか言いようのないフィクションをニコール・キッドマンは説明できないままに信じたことで、大人と子どもという見た目には明らかに不釣り合いな二人が愛し合う夫婦二人として見える状態(見分けがつかない)、つまり、生きたフィクションとして観客の目にも映った。けれど後半、実は少年がニコール・キッドマンが生前の夫に宛てて書いていたたくさんの手紙を読んで、自分がその夫であると思い込でいたという、精神医学で解釈可能な説明が提示される。それによって「生まれ変わり」のフィクションは、ニコール・キッドマンが亡き夫を忘れられないから信じてしまい得る、動機づけられたフィクションに成り代わって嘘となる。
じゃあ、観客はなにを見させられてたんだとなるんだけど、ラストにキッドマンは結婚という、平和で幸せに生きるためという動機づけられたフィクションに身を置こうするんだけど、「生まれ変わり」のフィクションとその梯子外れによって掘り起こされ露呈したどうしようもないエモーションを折りたたむことが出来なくなっている。折りたためてると思ってたどうしようもないものを炙り出したかったんだろうなと思うけど、信じていいような原題とオープニングシーンだったから、それは違うでしょという感じ。
あ