このレビューはネタバレを含みます
自宅で。
1986年のアメリカの作品。
監督は「ローラーとバイオリン」のアンドレイ・コンチャロフスキー。
あらすじ
アラスカの監獄から脱走することに成功したマニー(ジョン・ヴォイト「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」)とバック(エリック・ロバーツ「ザ ・メガロドン 大怪獣覚醒」)。彼らはその後、監獄署長のランケン(ジョン・P・ライアン「バウンド」)からの執拗な追撃を掻い潜り、なんとか貨物列車に乗り込むことに成功するが、乗り込んだその列車は機関士が心臓発作で死亡しており、無人の暴走機関車だった!
アマプラにて、パッケージの古めかしさからなかなか配信で観れそうになかったので気になって鑑賞。
なんと今作あの日本の名監督黒澤明、原案によるものということで恥ずかしながら黒沢作品を一本も観たことがない俺にとって初めて黒澤明が間接的ではあるが関わりがある作品に触れたわけだ。
お話はあらすじの通り、主演が「アナコンダ」の強烈な悪役の印象が未だに強いジョン・ヴォイトと妹がジュリア・ロバーツ、そして娘がなんとエマ・ロバーツという、今や家族の方が知名度が高いエリック・ロバーツというなんとも悪役顔の2人。
その2人がまさに適任な脱獄囚を演じるわけなんだけど、まずアンストッパブルな状況下に入る前の脱獄シークエンスが良い。
舞台はアラスカということで、まさに極寒の、観ているだけでこちらも凍えそうな冬景色なんだけど、洗濯係のエリック演じるバックがマニーを潜ませた洗濯籠を乗せた荷台で監獄から少し離れた洗濯場に行くフリをして、地下下水道から脱獄しようとするんだけど、脱獄したとて上述したように極寒なので、2人でマッパになって、寒さ避けのジェル(何が原料かわからないめちゃくちゃ不潔なやつw)を塗りたくって脱出、そこから下水でずぶ濡れになりながらも、排水している所から飛び降りて、猛吹雪の中脱走していく、別になんらスリリングなピンチ自体はないものの環境の過酷さとまだお互いのことをよく知らない相入れない関係の2人の会話劇を聞いているだけで観ごたえがあった。
で、そこから凍え死にそうになりながらも辛くも、乗り込んだ列車でやれやれ…と思っていたら、なんとその列車の機関士が心臓発作で死亡、暴走機関車となってしまう。
まぁ、ただこのピンチの状況下に置いても、2人自身は疲れ切っており、全然わかっておらず事態の緊急性に気付いたのは、仕事をサボるために偶然同乗していたサラ(レベッカ・デモーネイ「トム・クルーズ-永遠の若さを追求して-」)が衝突の衝撃を少しでも緩和しようと前方から2人のいる後方に逃げ込んできたからわかったわけで、どちらかと言うと前半は周囲の管制塔のスタッフやランケンたち刑務所職員の奮闘ぶりに話が使われている感じ。そこら辺は割とコメディ調だったりするんだけど、1番頑張ってたスタッフがしつこく2人の居場所を聞こうとするランケンに逆ギレした後にトイレに顔突っ込まれるところとか可哀想だった。
で、一方、2人はサラから切迫した状況下に陥っていることを聞き、飛び降りようにもその時点では既に機関車は猛スピードで落ちたらその時点で全身粉砕骨折で命はないという瀬戸際で、焦って仲間割れしたり、なんとか機関車を止めようとする役を買って出たバックが、しかし途中でこりゃ無理だと舞い戻ってマニーに怒鳴り散らされるなど、割とグダグダ。
そのうちに機関車と同じく暴走状態に入ったマニーが1人果敢に運転席に乗り込もうとするんだけど、途中2人の居場所を突き止めたランケンがヘリで飛び乗ってきてラストバトル!ただそれ自体は割と呆気なく終わってしまい、それでもなお事態は変わっておらず、機関車の向かう先は化学工場!さぁどうする!?という状況下の中でマニーが選んだ選択肢とは?って感じなんだけど、なるほど、こういう道を選んだか。
一貫して「自由」を渇望したマニー、最期に選んだ選択肢は実に男らしいとも言える。ただ、なんか観る側からすると、あんまりスピードが出てない気もするんだよなぁ笑ジョイント外して運転部だけ切り離すなら、飛び移るとかできなかったんだろうか?まぁでもスピード出てるし、重傷のマニーには難しいか…。
ただ、ラストシーン運転部の屋根に乗り、両手を広げて最期のその瞬間まで「自由」を感じようとするマニーの勇姿は凄かったし、ジョン・ヴォイトの血管ブチ切れそうな熱演と相まってこれはこれで印象深い。
むさい男2人による、非常に男臭ーい映画で舞台の寒々しさと相まって、この季節に観るにはうってつけの一本。