キヲシ

暴走機関車のキヲシのレビュー・感想・評価

暴走機関車(1985年製作の映画)
3.8
監獄映画であり脱獄映画であり機関車映画でもある。アラスカの白い荒野を爆走するディーゼル機関車が大迫力。繊細なイメージのあるジョンボイドが脱獄を繰り返す囚人役を熱演。相棒となる囚人バック(エリックロバーツ)のボクシング試合の最中、ランケン所長(ジョンPライアン)の刺客による襲撃に唖然。出刃包丁を掌で受け止める!ボクシングシューズやグラビア写真を使って刑務官の気を逸らして明かりの無い下水道からの脱獄。「クソが付いたあ」「すぐ落ちる」。雪原を駆け抜けて停車場の詰め所で靴を探すバックに心から同情…。ただ、後半クライマックスでのマニーにはさらなる試練が…連結器で…ひぃぃぃ。鉄道指令センターでのやりとりも緊張感有り。しかも、所長が乗り込んでのトイレでのマウント合戦が強烈。そしてそして、あろうことか暴走機関車にまで。マニーとバックは粗暴で愚かな面が露悪的に描かれていて、凡そ共感出来る人物ではない。銀行強盗での一攫千金を夢見るバックに、働け掃除夫になって上司にケチ付けられても「こうやって(顔芸!)汚れを取れしがみついて働くんだ」と熱弁した後の虚脱顔。傷付いた手で開かずの扉と意地になって格闘。100キロ超えの速度で雪原を走る機関車にしがみつくも諦めて車内に戻ろうとするバックに悪態をつく。だがこの狂気じみた強烈な意志を体現するラストに感動。劇伴には80年代を感じるが、中身は70年代風。「ロンゲストヤード」と「アルカトラズからの脱出」そして「北国の帝王」か。原案黒澤明!
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