日本の家族のリアル
ホームドラマ仕立てのホラー、あるいは是枝版「渡鬼」
実家とか相手の実家とかおばあちゃんちとか
親せきの子とか因縁の人とか
本音とか建前とか
放たれる言葉の真意とか
歩いても歩いても…てそっちか…
父方の祖母は大きな港がある街に暮らしていた
この祖母の家(祖父は僕が生まれる前に早逝)に行くのは大好きだった
お盆の走馬灯、仏壇の果物、線香の匂い、プロレス中継、美人の従姉、花火の上がる夏祭り、スクーター、雑魚寝、従兄のレコードコレクション、兄弟ゲンカ、水打ち、裸電球をたよりにすのこを歩いていく風呂場、麦茶、内職、扇風機のリボン…祖母の家には実家にないものがいくつもあった
うちの父は婿養子で、僕は一人っ子である母方の祖父母と三世代で暮らしていた
事情があって祖母の親せきと同居していたが、小学校二年生の時に婿養子の父が新居を構えたから分家中の分家
ずっとその土地に暮らす父方祖母の家の本家然とした落ち着きが好きだった
祖母は孫の中で僕が一番遠くに住んでいたからか、一番下の息子である父のことが可愛いのか、他の子より多いお年玉をくれた
ちょっととっつきにくいしわがれ声の叔父が金魚の世話をしているのを見るのが好きだった
おばちゃんはとても優しくて気取ったところがなくて、子供心にその家にはもったいないくらい(少なくとも裕福ではなかった)器量がよくて、二人きりになるとドキドキさえした
実家に比べるといさかいとか裏表とか言葉の毒とかがなく、まっすぐで、ある意味非文学的なところが好きだった
今は家も新しくなり、叔父も一人だけ故郷に帰った従兄も亡くなり、おばちゃんと従兄のお嫁さんの二人暮らしになってしまったけど
また帰ってお線香をあげなきゃな…
とうもろこしのかき揚げ、寿司、黄もんしろちょう、ジョイディビジョン、レコード、ドアの向こうから流れる曲