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あしたのジョーのryotaのネタバレレビュー・内容・結末

あしたのジョー(1970年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

原作ファンにはとんでも無く納得できない、大事なところをカットして適当にまとめてしまったと考察して大炎上が目に見える作品ですが、実は私はそれほど嫌いではありません。むしろ馬場当先生(脚本、実は私のお師匠さん)の解釈なのか、とてもスマートかつ大胆に脚色された佳作だと思いました。

確かに私も原作やアニメが大好きで、もうなんとも繰り返し観ていますから、この作品はこうでなくっちゃ、みたいなことはたくさんあります。あれ、ここ切っちゃったの?とか、あれ、ここそんなのはジョーじゃないとか力石じゃない!、あしたのジョーの良さがわかってない!って思うところも無数にあります。初見の時は腹立って二度とみるか!とブチギレたのですが笑、でもですね、何年も経って改めて観てみると、結局そのまんま原作通りに映画にするのではなく、2時間の制約の中で、手だれの映画スタッフ(監督の長谷部安春さんはあぶない刑事撮ってます)によって再構築して観やすくテンポよく、楽しい映画作品にしようという意図をすごく感じて、それはそれでいいのかなって思い直しました。、見返すと意外にもよくできた作品であると再認識しました。漫画やアニメの、いわゆるケレン味ってやつを、当時できる限りの映画的発想でやっているところ、今見るとダサいけど、それはそれで懐かしさもあってある意味可愛いです。

とにかく、昭和の風景が素晴らしくて。そう、このドラマはザ・昭和なんだよねと。当時の風景もそうだけど、でてくる人たちの服装や立ち振る舞いは今みると貴重そのものです。それに、原作通りのようでそうでないこの進め方、絶妙ですよ笑。石橋正次のヤンチャぶりはダサカッコイイし、力石役の方はボクシング経験者だけあって様になってるし(芝居は別としてね)、白木葉子役の方は棒読みがひどくてただ単なるお人形さんだし(あ、力石さん、さんって呼んでたのはちょっと気になりましたけどね。力石くん、でよかったのに。細かくすみません)、ウルトラ警備隊の隊長はカッコイイし、丹下段平に至っては普通の労働者にしか見えないです。そんなオリジナリティあふれる笑「あしたのジョー」ですが、全体を通したまとまり感はさすが馬場先生(「復讐するは我にあり」「卍」なんかをお書きになっています)だと、結局は感動しました。

その後、山P主演の映画とかありましたけど、どうしたってこっちの方がリアリティあります。仕方ないですよね、昭和に作られたんだから。そう、VFXなんかなくたって、映画はできるわけで、ある意味貴重な作品が現代に残っている。それだけで幸せです。
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