『切腹』と並んで、やたら海外評価の高い時代劇。武家社会の不条理を描く小林正樹作品だが、「上意」に逆らうことを禁じられ、断るという選択肢が与えられないばかりに「恐れ多い」を連呼する三船敏郎の姿は今見ると営業職とか接客業なんかにも通ずるところがある気がする。この歯切れの悪さ、まるでクレーム対応である。小林正樹作品における武士とは現代社会における営業マンなのかもしれない。
蓮實重彦が「ちくま」の連載で「小津安二郎は、間違っても、日本を代表する世界的な映画作家などではない。そんなことは、黒澤明にでも任せておけばよろしい。」と相変わらずの婉曲ディス構文を発揮しているが、同じ意味で小林正樹もまた「日本を代表する世界的な映画作家」なんだろうなと思った。
個人的にはデフォルメされたチャンバラなどから、時代劇におけるマカロニウェスタンといった印象を抱く本作(小林正樹と黒澤明は全部そう)だが、時代劇において何が正統と見做されるのかもわからず、また小林正樹が正真正銘の日本人とひとまず見做されていることから「マカロニ」の汚名はかろうじて免れ得ている。
ひとまず、脳内エセ京都人が「えらい派手にやってはりますなぁ」と言っていたとだけ記しておこう。