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残菊物語のたのネタバレレビュー・内容・結末

残菊物語(1939年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

見始め、音質の悪さで台詞が聞き取れず不安になったけど、いつのまにか雑音の存在を忘れてしまうくらい、音の世界に引き込まれた。夏の夜風に揺れる風鈴、どこからともなく聞こえるお囃子、大阪の街を賑わす太鼓、旅芸人一座をしたたかに打つ土砂降りの雨。そしてどんな時でも、お徳の声は小鳥のさえずりのように優しく、凛として響いていた。

どのシーンも、表情がはっきりとは見えなくても感情が確かに伝わってくる映像の説得力。

菊之助の起死回生の大一番、お徳は奈落に降り、神棚に向かって懸命に手を合わせる。その姿が愛だった。

苦楽を共にしながら一途に願い続けた、愛する人の成功。その姿をまぶたの裏に浮かべながら深い眠りにつくお徳は、幸せだったと思う。

「推しの幸せこそが自分の幸せ」の究極形。
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