残菊物語の作品情報・感想・評価

「残菊物語」に投稿された感想・評価

世界のMIZOGUCHIを久々に。冒頭は、あまりにガヤガヤし過ぎで、誰が何言ってるのか全く聞き取れず、え…ストーリー理解できるかな?と不安になったけど、途中からは7〜8割くらいは聞き取れてよかった。昔の日本映画はこれがちょっと問題笑 とはいえ、ストーリーはすごく分かりやすい。親の七光りで歌舞伎の世界でチヤホヤされてばかりの養子 菊之助は、実は陰でみんなが大根と噂してるのを知っていた。そんな菊之助に初めて正直な意見をはっきり述べ、励まし続けてくれる女 お徳に慕情を抱くのに時間はかからなかった。が、お徳は下女なので、世間の評判を気にした母は暇をやり、それを知った菊之助は家を捨てて飛び出し、お徳を追いかけて妻 とし、新たな地、大阪で自分の演技力だけで勝負しようとするのだが…という流れ。1939年の日本映画で143分という長さ。序盤は最後まで見通せるかなと思ったけど、メインのラブストーリーが展開し始めてからというもの、すべてのシーンに心を奪われて驚いた。ひとつひとつのカットが長いのが有名やけど、その中で施されてる演出がものすごく繊細かつ雄弁で、一見地味なのに、吸い込まれるように見入ってしまう。そして、カメラが移動を始めたら、視線と共に心まで持っていかれる鮮やかなエモの流れがお見事過ぎ。流麗! これぞアート! 特にふたりで西瓜を切って塩をつけて食べるシーンや、そのあとおかんとお徳が喋るのを他の下女たちが盗み聞きしてるシーンなどは、前半では特に印象深い。後半は、ひたすら大根から抜けられず、落伍していく菊之助のいじけた感じがマジいらいらするねんけど、それを必死で健気に支えるお徳にもイライラ。お徳がもっと力強い感じなら気にもならんだろうが、声が甲高く、弱っちいのにネチっこく、前向きなのにウエットやから、見ててゲンナリしてくる。溝口作品には多いけど、本作も、日本文化の最悪な面がしっかり描かれてて、それも合わせてイヤになってくる。特に伝統芸能の世界は、死ぬほどネチネチしててマジ最悪。やから最後の流れはちょっと都合良過ぎね?と感じなくもないんやけど、全体の演出が素晴らし過ぎてどうでもいいや!ってなる。終盤は、やっぱMOZOGUCHIヤバい!と、驚嘆に次ぐ驚嘆! それまで基本ワンシーンワンカットだったのに、カットバックが入り始めてからは、ジワーッと感動が広がり、床のお徳と舟の菊之助のラストカットには、全身トリハダ!!! すげーーーー!!!って思わず声出て、拍手してもーた! 素晴らしかった! デジタル修復ブルーレイが出てるので、それでも見てみたいのだが、あんまり画像が変わってないとのレビューもあるので、買ってみるのはナシやなぁ…。うーむ。でも見てみたい気持ちも…,。ホントに映像素晴らしかったからさ。
まさ

まさの感想・評価

5.0
歌舞伎の世界の愛の物語。なんて上品なのだろう。女性のお徳が菊之助を思いやる一生懸命な姿に心打たれた。お徳の気持ちも、菊之助の気持ちもとてもわかるが歌舞伎の世界の常識のようなものが2人の運命を狂わす。終盤は涙が止まらない。菊之助の義父・菊五郎があれほどお徳を女房と認めていなかったのに「女房のところに会ってきてやんな、おめぇがこれまでなったのはお徳が骨身惜しまず励まして修行させてくれたお陰なんだ」と認めたときは本当に涙が溢れた。そして終盤のお徳の演技に脱帽するとともに、これまた涙が止まらない。これほどの傑作に出会えることは中々ないが「雨月物語」といい、本作といい、溝口監督は素晴らしい。

余談:
最初Huluで鑑賞したのだが、セリフがほとんど聞き取れませんでした。字幕がないと理解するのは無理とわかり、今回Blu-rayを購入したのだが、宝物になりました。
Yuuki

Yuukiの感想・評価

4.0
戦前の映画というのに驚き。
溝口特有の長回しや映像美がこんな時代から確立されてたなんて。この時代にこんな豪華な撮影がなされてたなんて。
セリフも聞き取りやすくて字幕なしで大丈夫でした。
内容は歌舞伎役者の涙のメロドラマ。
当時の美しい役者がたくさん拝めて、何より奥さん役の女優が素晴らしかった。
ただ、私的には主役の役者が違和感ありました。美貌の若旦那という設定ですが、老け顔で、抜群の棒読みでした。歌舞伎も出来て普通の演技もできる人ならもっといたはずでは…脇役はみなさん素晴らしい演技だったのに。
溝口健二作品では、「山椒大夫」の厨子王も違和感でした。
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

4.2
「残菊物語」
流石に76年前の画質はBDでも厳しいものがあるが作品は極上である。映画が2時間を超える頃、歌舞伎の大演出の舞台が披露されるがマジでカッコ良すぎる。本作がなぜ日本同様に西洋で多大なる影響と人気、評価されているかが存分に堪能、味わえる素晴らしいの一言に尽きる溝口の大傑作だ。
jeff

jeffの感想・評価

4.0
列車に乗った菊之助、お徳を探すその動きを逐一カメラで追わせようと、列車の壁をすべて取り払った大胆な美術。

田舎に流れて落ちぶれた役者を迎えるカエルの声。街の流しの物売りの声や長唄との、その残酷対比。

福ちゃん(若き高田光吉)の水も滴る美男ぶり。

長回しに酔いながら、唖然、呆然、唸りながらの143分。
Qbrick

Qbrickの感想・評価

5.0
僕の生涯ベスト「西鶴一代女」に並ぶ溝口監督の大傑作。西瓜を食べる2人、その奥で揺れる線香の煙。泣く。

溝口監督が素晴らしいのはいつでも冷酷で、人物を客観的に突き放すのに世界の純粋さ、人間の情念を絶対にフィルムに焼き付ける。最高です。
溝口健二監督の初期作品。
1939年製作の映画であり、当時の軍国主義の流れを嫌った溝口監督が描いた舞台もの。

歌舞伎界に生まれ育って「大根演技」をしても持て囃される若旦那=菊之助だったが、子守女のお徳(森赫子が名演!)は、彼のことを思って「もっと芸の道に真剣になって凄い役者になって欲しい」とズバッと指摘する。ここから菊之助の「芸に対する真剣な姿勢」が生まれる。
そして菊之助がお徳に恋愛感情を抱くが、お家柄もあり、大旦那などからは猛反対される。
「芸」に向かい合うため、東京から大阪に行き、「一年後」になってもパッとせず、更に「四年後」の旅芸人生活。一緒に回ったお徳は身体をこわし気味になる。
そして最後は、………感動の物語となる。

大旦那が菊之助に言った「お前、(病床の)女房(=お徳)の所に行ってやれ」というセリフでは涙腺全開(笑)

溝口健二監督のワンシーン・ワンカットの緊張感が伝わる大傑作である。
tokio

tokioの感想・評価

4.1
Rec.
❶17.10.14,アミューあつぎ映画.comシネマ/松竹シネマクラシックス傑作選
独り言

独り言の感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

話は古典的だけど、シンプルかつ普遍的で美しいな。
特にヒロインは女形かというくらい、夢の女感。
舞台シーンも見入ってしまうほど、他にも貴重な映像が沢山ある。

最初から悲しい最後を想像できるストーリーだったけど、それでも対比あるラストシーンに泣けてしまった。
溝口ヒロインは100年後の男どもを狂わせる 溝口健二「残菊物語」

戦前の溝口作品屈指の傑作と名高いですが観終ったて前世紀屈指の傑作と言い換えても良いんじゃないと思えました。

型は溝口得意のメロドラマですが当然型破りの日本人風土がみなぎって西欧人が100年かかっても描けない情緒に溢れております。

この拙文の本当の狙い。ヒロインお徳を演じた森赫子。

こんにちではさすがに忘れられた女優さんですがこんな女性と添い遂げられたら男冥利だなと80年近く経過した現在でも感じさせてくれる名演でした。
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