僕はこの作品を、〖芸事/芸道〗という閉じられた世界を描いたものであると同時に、[〖何者にもなれないアーティスト(未満)の男〗と〖男のミューズであろうとする女〗の物語]としても受け止めた。
ふたりの…
歌舞伎界を舞台に、五代目尾上菊五郎の養子である二代目尾上菊之助と、その実妹の乳母お徳との身分違いの悲恋を描く。
長回しによるワンシーン・ワンショットが多用されるため、それぞれの場面への没入感が凄ま…
たいへんよかった。
歌舞伎座一座の跡取り息子に恋をした女中の破滅的な流浪の物語。『国宝』の参照点でありながら、あの映画が捨象した主人公に付き添う女性の自律性をちゃんと描いている(というかそちらが物語…
『国宝』の「100年に一度の壮大な芸道映画」という宣伝文句が、いかに何の意味も持たないものであるか、それを再認識させられてしまう映画が、この『残菊物語』である。
歌舞伎の上演シーンは、この最たる例に…
固定撮影と移動撮影のメリハリこそ、溝口健二の魅力である。「徹底した長回し」「華麗な移動撮影」などは溝口健二の映画を評する際の常套句だろうが、それらが活きるのは、彼が固定撮影の名手だからである。菊之助…
>>続きを読む芸道に生きる男とそれを支える女。
『国宝』が心に響いた若い世代にも是非観てほしい作品。
菊之助が赤ん坊の時以来に会った甥に「大きくなったなぁ」と声を掛け「おいちゃん誰?」みたいな事言われてる場面…
1939年公開のトーキー映画というだけで観る価値がある。しかも監督は溝口健二ときたら観ないわけにはいかない。ひとつひとつのカットがそれはそれは長かった。筋書きは決して美談のみとは思わないが、引き込ま…
>>続きを読む普通じゃないヤバい映画なのは最初のほうからもう全然違うと思う。
最初にあいつの芝居はダメだな酷いなとか悪口言ってて、あっこれからこっちくるみたい。あっきた。って悪口をやめてお世辞を言う、っていうのを…
傑作。
身分違いの恋愛が感動を引き起こし、残酷さを引き立たせる。
お徳が菊之助にひたむきに寄り添っているところに胸を打たれた。
身分や家柄を超えた純粋な愛がそこに存在している。
しかし身分違いも…
「役者は世間が命。人気があるうちが華だ。騒いでもらっているうちが天下だ」
芸と愛と血筋に翻弄される男女を、
モノクロ長回しで描く。
傍にいてくれる人の存在が、
芸の道を支える。
血と芸の業は…
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