美貌の歌舞伎役者と、義弟の乳母との悲恋。
実話に基づいた作品。
劇中、出てくる歌舞伎役者は皆、実在するので、リアルに感じる。
名門の御曹司・二代目尾上菊之助は、周りからチヤホヤされていたが、裏では大根役者と陰口を叩かれていた。
そんな放蕩息子の彼を、女中のお徳が諌める。
立場上、それは許されることではなかった。
しかしこの出来事を機に、菊之助はお徳に愛情を抱く様になる。
世間体から、奉公先を追い出された彼女を追う菊之助。
淡々としたモノクロ映像。
長回しの技法で映し出される舞台、貧しい長屋の人々の暮らしぶり等が秀逸。
華やかな役者生活から一転、どさ回り生活で心が荒んでいく菊之助を、献身的に支えるお徳がけなげ。
ラストの船乗り込みシーンの賑やかさと、静寂の中のお徳の対比が素晴らしい。