Jeffrey

オレゴン大森林/わが緑の大地のJeffreyのレビュー・感想・評価

3.0
「オレゴン大森林/わが緑の大地」

冒頭、スタンパー一家。伐採者、組合員、ストライキ、取引会社との契約、頑固な老人、事故で骨折、向こう見ずな息子、従兄弟、腹違いの弟、恨み、仕事、ダイナマイト、ボート、辺り。今、一家と同業者の戦いを家される…本作は役者で知られるポール・ニューマンが監督をした1971年の米国映画でこの度、復刻シネマライブラリーから初円盤化され、BDを購入して初鑑賞したが素晴らしい。

この作品の魅力の1つに雄大な大自然を描いた感動大作と言うのは当然なのだが、60年代カウンターカルチャーの旗手ケン・キージーが執筆した重厚な小説をニューマンが映画化したと言う渾身のドラマを見れることがまず幸せである。それに素朴で力強い男が守り抜きたいと言う"誇り高き男たちの世界"を見事に映し出しているのも男のロマンを揺さぶるし、男性が見る分には非常に楽しめると思う。

さて、物語はオレゴン州で代々続く伐採業者のスタンパー一家を軸に、昔ながらの生活を送っていたが、彼らの家訓と信念により同業者たちと対立していくと簡単に説明するとこんな感じだ。要するに木材の値上げを要求してストライキをする町の同業者たちがスタンパー一家に協力を求めるが、全てを拒否してしまう。全国の組合長が訪ねてきても、それを一向に変えず彼らは脅迫めいた言葉を残していき、妨害に遭うスタンパー一家の苦悩が描かれる。



本作は冒頭から魅力的である。まずカントリーチックなミュージックが流れ、大自然がフレームインされる。それは空中撮影され、森、海、空が壮大に写し出される。そしてカットが変わり一軒家が映される。そこには5人の男性が何やら話をしている。そしてボートに乗ってる男性がダイナマイトを湖に投げ込まれ、殺されかけようとしている。どうやらスパンキー一家と対立しているようだ。続いてその一家がディナーを楽しんでいる家族団欒の描写へと変わる。そこでは男は組合に対しての怒りをぶちまけながら食事を楽しそうにとり、妻はメイドのごとく料理を作ってはテーブルへと運んでいく。

続いて土砂降りの描写に変わり、斧で木を割ってる男たちを映して一方、ボートから数人の男性が雨合羽を試着してこちらへとやってくる。一家は組合員の人たちを家のコテージへと案内する。そこで問題点を解決しようと話をする。そしてカットは翌朝に変わり、1番下の息子が家へ戻ってくる。親父は息子の伸びた髪の毛に対して愚痴りながらも家の中へ案内する。


息子が疲れたから休ませてくれと言い、いち早く部屋に向かい休む。そして息子の独白が家族の前で行われる。翌朝、父親が起きろと家で騒ぎ始め息子たちを起こす(仕事のためだ)。そして朝食をとる。彼らはボートと車を使い現場へ行き仕事をする。そして彼らは海岸に行き海で戯れる一家の描写をカントリーミュージックを通して映す。

続いて夜になり、勢い良くボートが乗り上げてしまい柱にぶつかる。陽気な一家の男たちは夜な夜な帰ってくる。妻が少し苛立ちながら彼らを迎える。そうした中、不幸な事故が起こる。そして家族は一家団結していく…と簡単に説明するとこんな感じで、腹違いの息子(リーランド)が10年ぶりに家に帰ってくる時点で、彼の目を通してスタンパー一家の1日の事柄が映されていく映画である。

やはり長髪にジーンズ姿で都会的な物腰と口ぶりはヒッピー風だと思われてしまい、父親に侮蔑の目を向けられるのは世界どこでもそうなんだなと思った。そうした中、都会で過ごす環境と田舎町で育つ家族の感覚の違いがリーランドに違和感をもたらしていくと言う設定も非常に良い。こういった閉鎖的な環境を少しでも打破させようとすると都会人の思惑が描かれている。

それは果たしていいのか悪いのかわからないが、この作品はあくまでもそういった主張している1本だ。この映画凄いところは実際の技術をきっと学んで、役者たちが完璧に役作りに挑んでいる点だろう。圧倒的な迫力と緊張感で木を黙々とチェーンソーで切って倒れていき、砂埃が舞うオレゴンの街の描写は印象的だ。

やはりこの映画の最大の見所はあの自然の猛威に襲われる人間の死の淵を描いたクライマックスのロケシーンだろう。きっと水槽か何かで撮影していると思うが…あんな場所で撮影したらガチで人が死んでしまうから。リチャード・ジャッケルは非常に芝居が上手く、この作品でアカデミー賞にノミネートされていたそうだ。あの水中で笑い出したり、倒木が全く動いてくれないもどかしさなど非常に絶望的な状況を作り出している。




余談だが、この作品の原作者の最も有名な作品ではアカデミー賞にも輝いたジャック・ニコルソン主演のフォアマン監督の「カッコーの巣の上で」もある。もっと言及する、彼は小説家であると同時にヒッピーコミューンのリーダーとして活動もしていて、1964年にLSD (合成幻覚剤)を広めたことにより、後のビートルズの映画「マジカル・ミステリー・ツアー」に影響を与えたともされている。いわばサイケデリックな塗装を施したバスが信仰者のヒッピーたちに魅了させ全米を回ったとの事だ。
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