似太郎

日本春歌考の似太郎のレビュー・感想・評価

日本春歌考(1967年製作の映画)
5.0
【猥歌】

大島渚の映画は時に政治的アジテーションがうるさく理屈っぽい作風が少し苦手なのだが、本作は別格と言っていい。

主演の荒木一郎がホンモノのスケベ/エロエロな妄想人間を演じていて不気味なシュルレアリスム映画である。

🙏若い娘とやる時にゃ〜、ホイホイ〜、親の許しを得にゃならぬ〜、あ、ホイホイ〜。

左翼教師を演じる伊丹十三(その後で殺される)が生徒に教えたエロい歌=春歌を主演の荒木一郎が独断解釈していく。妄想と現実の垣根を超え、高校生達が政治運動に目覚めていくまでを即興的、偶発的イメージによって作られた作品。

黒い日の丸、紀元節、ポルノ映画、ベ平連etc…。昭和の混沌としたムードが色濃く大島渚の悪魔的発想によりグイグイ抽象的な画面に引きずりこまれること間違いなし。

この監督にありがちな左派イデオロギーをわざわざ持ってこかなかったのが功を奏し、ルイス・ブニュエル的な脱・構築路線へと突き進んだ記念碑。本作をマトモに松竹で配給して一般上映できたこと自体が奇跡と言える。
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