claire

PASSIONのclaireのレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
4.0
心のどこかで、物語上では決して交わることのない河井青葉と占部房子という二人の役者が、同じ空間を共有してくれないかとずっと願っていた。ほとんど対極にある二人の女と、彼女たちが中心に位置する磁場のその外周を飛び回る男たち。発声が軽く台詞が重い河井青葉、発声が軽く台詞も軽い占部房子、発声が重く台詞も重い男たち。言葉の感覚に長けた河井青葉、言葉の使用に長けた占部房子、言葉の意味に囚われる男たち。二人の女の場で起こるそれぞれのドラマの面白さに興味を惹かれつつも、どうしても彼女たちがどのように動き喋るのかをもっと見ていたい、そして願わくばその二人が言葉を交わす瞬間を目撃したいと思わざるを得なかった。だからこそ「偶然と想像」第三話『もう一度』は本当に意味がある作品なんだよ。

河井青葉を撮った二つの長回しはどちらも素晴らしかったけど、特に最後のシーンのあの「手」にはグッとくるものがあった。役者の声が発せられるその顔に焦点を合わせると手をちゃんと見れないし、逆もまた然りであり、でもあの場面ではどうしてもあの手を見ていないといけないような気がした。
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