SatoshiFujiwara

8月の終わり、9月の初めのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

8月の終わり、9月の初め(1998年製作の映画)
4.8
本作、7〜8本ほど観たアサイヤス作品中では間違いなく最高、と言うか全作品中でも最高なんじゃないかと無責任に断言したくなる出来。多用されるバストショットと手持ちカメラは、まるでアマルリックやバリバール、ルドワイヤンらと同じ場所にいて彼/彼女らの挙動を共有しているような錯覚に陥るが、しかしまるで小説の章立てのようなタイトル、「三ヶ月後」「半年後」というようにあっけなくまたさり気なく進んで行く時制、反復するディゾルヴは私小説的な内容とそれをあくまで三人称視点から叙事的に扱わんとするアサイヤスの描き方の二面性を表して余りある。確か『感傷的な運命』も似た語りのスタイルを用いていたように思うが、この両者の緊張関係が本作を実に奥行きある作品にしているんじゃないか。

…なんてそれらしい理屈はさておき、ジェニー(ジャンヌ・バリバール)とアドリアン(フランソワ・クリュゼ)がほとんど最後になってようやく初めて同じフレームに収まるシーンの何て素晴らしいことよ。あるいは最後の最後、ヴェラ(当時16歳くらいだったはずのボーイッシュというかマスキュランなミア・ハンセン=ラヴ)が新しい恋人(だろう)と抱擁を交わしながら街を歩いて行くところをカフェの中からたまたま目撃したガブリエル(マチュー・アマルリック)が店主にマッチをもらおうとしながら、かつそれを追おうとする仕草を見せるも結局にこやかに惚れ惚れと眺めるシーンは全く感動的と言うしかない。泣きそうになりましたわ。
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