クマヒロ

牛乳王子のクマヒロのレビュー・感想・評価

牛乳王子(2008年製作の映画)
3.5
『異性への憧れと畏怖』

内藤瑛亮監督のエッセンスが詰まった映画美学校時代の短編。ホラーが好きな監督の徹底描写で、異性に対する恐怖を凄惨に描き出す本作『牛乳王子』

思春期の葛藤と言葉の軽さ、暴力性。女性が男性に感じる気持ち悪さの要約のようでもあり、異性への憧れと畏怖を強く感じる作品。男女差が出る思春期をセンセーショナルに暴力的に凄惨に描き出す作家性はこの頃から。
昔から容赦ない描写は本作では学生映画ならではの荒々しさもありとにかくキャッチーです。血と牛乳の気持ち悪さ、ピンク色になっていくことにより、フィクション性を強く感じるのが面白いです、

また内藤瑛亮監督作品によく登場するテーマ。大人になることへの恐怖も描かれます。
大人になれない子供のままの姿として現れる牛乳王子。赤白帽と体操着、幼児的な行動。精液の代わりに牛乳を使うこと等にこだわり、大人になることを受け止め切れない主人公を見事に表現します。
罪の心をちゃんと持たなければならないと、『許された子どもたち』にも重なるテーマ、大人になることに怖がらなくて良い、と鬱屈した子供の気持ちを解きほぐす『ライチ☆光クラブ』にも通じるテーマもここで描かれます。それをミュージカルで表現する味の濃さはまだ不器用な感じもするが、そこも愛おしい作品だと感じました。

タイトルバックは当時から最高で、音楽の荒々しさ、気持ち悪さ、後味の悪い展開もとにかくセンスが良いです。内藤瑛亮監督作品は自主制作映画であると、より光って見えます。
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