はぐれ

奇跡のはぐれのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
4.0
「宗教とは奇跡と殉教と布教活動」

そんなことわかりきっているのにドライヤーが創り出す世界にはもしかしたら奇跡は本当に存在するのでは?と錯覚を覚えてしまうから映画って恐ろしい。いや、むしろそう思えてしまう自分自身の心境の変化に恐怖を覚える。

キリスト教とイスラム教の対立でもなくカソリックとプロテスタントの対立でもなく、プロテスタント内の宗派の違いから対立してるってもう訳が分からない(笑)
って最初はあざ笑ってたんだけど、気付いたら計算されつくしたモノクロの画作りと粛々と積み重ねられていくテキストと演技の量に圧倒されてその世界に引きずり込まれてしまう快感。本当に映画って麻薬だよね。

ラストのあの奇跡の後に医者と牧師のリアクションを決して映さなかったドライヤー。そのわずかな余白に監督の観客に対する誠意を感じた。それを描かないドライヤーはやっぱり信用できる。
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