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BIUTIFUL ビューティフルのchsyのネタバレレビュー・内容・結末

BIUTIFUL ビューティフル(2010年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

鑑賞中も鑑賞後も胸の痛みが付きまとう。
現実の人生がこうも悲惨であることは実は私たちは知っている。
ただ、映画でも小説でも滅多にそこばかりを取り上げて描かないだけで。
世界中で日々凄惨な事件が起こり、たくさんの人が巻き込まれ、たった一度の人生を、私と同じ重さの魂を、無残に虫けらのように扱われている。それが現実。
ただ、戦火の難民では想像が難しいことも、先進国の一つ、スペインの大都市バルセロナでの出来事ならばわが身に引き寄せて考えることも可能か。
散らかったアパートや不法滞在者の雑魚寝などのシーンが実にリアルで不快さを肌で感じられる。

そんな混沌の中で、自分にできる精一杯のことをして生きようとしている男ウスバル。子どもたちを案じる父親として、仕事仲間の面倒を見るリーダーとして、彼の生き様は一貫してカッコイイ。
しかし、どんなに真摯に生きようとも、または謙虚に生きようとも、現実は見境なく不幸の種をまき散らす。
そんな無力感を覚える作品でもある。

バルセロナに個人的思慕ありで鑑賞。イニャリトゥ監督の作品ではバベルの時より主題がはっきりし、描き方も観客寄りになった気がする。
より感情移入しやすく、自分の中で様々に考えさせられる。
ただ、やはりちょっと余計なものを入れ過ぎた感もある。中国人ゲイカップルの事情とか入れる代わりにバルセロナの街をもっと写しても良かったのでは…
あの街特有の光と影を表したかったかな。

他の方のレビューにもありましたが、ビューティフルのスペルミスが表していること…言葉は知っているが見たことは無い。知らない。だから本当のスペルも知らない。なるほど。
スペイン語圏の方が発音のまま書くとあの綴りになります。
教養が無い、とも言えますが、日本人でも漢字の書き順間違えるみたいな…
彼自身は躾に厳しく子供をちゃんと育てようとしている。身を置いた世界の中ではかなりまともな方では。
苦労続きだったウスバル。死後家族との再会を果たし安らかな時を持てたことが救い…かぁ。
(2015)
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