半兵衛

泣きぼくろの半兵衛のレビュー・感想・評価

泣きぼくろ(1991年製作の映画)
3.5
工藤栄一監督は80年代以降その映像美を再評価されて大作やスター主演の野心作などを手掛けているけれど、プログラムピクチャー出身の監督だけにこういう小ぢんまりした作品の方が性にあっているかも。少年院から出てきた一人の青年が様々な大人と出会い一人立ちするまでの他愛ない話なのに、ぶっきらぼうな男っぽい演出の中にある不器用な優しさと役者たちの飄々とした演技で見ていて心が温かくなる佳作。

あと主役である青年木村一八を元ボクサーのアウトロー山崎努、常識人の大滝秀治が一緒に旅をするという構図のバランスが良くて三人の息のあったやりとりに思わずほっこり。個人的には山崎努の姿に好きだった時代劇『必殺仕置人』の念仏の鉄を面影を感じて微笑んでしまった。

山崎努が木村と別れるときに送る、荒々しいけれど同時に優しさを感じるエールに胸が熱くなった。

劇中流れる松田優作の曲も作品の雰囲気とマッチしていて印象に残る。
半兵衛

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