カーペットがある限り

ガールフレンド・エクスペリエンスのカーペットがある限りのネタバレレビュー・内容・結末

2.7

このレビューはネタバレを含みます

大ヒット作を何本もぶっ放し、批評家受けする映画も撮れて、金もコネも何もかも手に入れて当時ハリウッドでできないことがないって状態だったスティーブン・ソダーバーグが、実験的に挑んだ映画の1本。

「失敗したってかまやしない。

 現役ポルノ女優に
 脱がない私生活を演じさせられるか?

 お前らこんな映画撮れるか?」

って挑戦的な作り手のマインドを探るだけでも充分に楽しめる。

実際、ポルノ女優を主役に迎えたR指定以下の映画なんて前代未聞。
「ボディダブル」のメラニー・グリフィスが演じた役に、監督のブライアン・デ・パルマが実際のポルノ女優をキャスティングしようとしてコロンビアと大揉めしたハリウッドは、当時も依然として柔軟さに欠け、ほとんど変わっていなかった。

サシャは実際多方面に活躍してた頭の回転の速い人。リーマンショックの前だというのに、証券会社で働く男と株の話で対等に話ができて、それが後で聞いてもまんざらじゃないのにも驚く。

当時日本にはほとんど入ってきてなかったマイケル・コースの黒いドレスをセクシーに着こなして戦闘服みたいだったけど、家に帰って服を着替えて恋人と電話し同年代の女の子らしさを覗かせる。

しかも、その男がうだつの上がらないダメ男なのに、そんな男にフラれまいとクールな顔しながらしがみつく。

サシャのイメージも損なわずに、観客が共感し、驚く仕掛けをちりばめたアイディアが、高級コールガールの華やかな一面を照らし出していて眩しかったわ。

ただ、予算か時間か、あるいはスタッフ不足のせいなのか、もっとしっかり作り込まないから、仕上げが雑で退屈になってしまったのが残念ね。

こういう、パッと思いついたアイディアで、ささっと映画が撮れてしまう環境にいたのは羨ましい限りよ。