やっぱりカルカン

南極物語のやっぱりカルカンのネタバレレビュー・内容・結末

南極物語(1983年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

初めて見ました。2/22(猫の日)の翌日にこれを放送するNHKBSプレミアム、なかなか攻めてますね。
映画は見た事がなくても、テレビを見ていると色々な場面で何度も南極物語の映像やストーリーのオマージュを目にします。そんな断片的な知識だけで視聴しました。

・過酷な撮影
VFXやCGなんてほとんど無かった時代。撮影はリアルガチで、主に北極と、少人数で南極ロケも行ったそうです。あの健さんですら、寒い所の撮影はもう行きたくないと言ったくらいなので人間も辛かったと思いますが犬の撮影は想像を絶する過酷さであった事が画面から伝わってきます。

・犬の演技
あえて“演技”と致しますが、それはもう素晴らしいです。リアルすぎて今こんな映画が公開されたら「虐待だ!」と大炎上する事間違いありません。
血は血糊だとしても、足を引きずって歩くシーンやケンカするシーン、噛み付くシーン、氷水に落ちて死ぬシーン、そりに轢かれるシーン、鳥を捕まえて食べるシーン、クラックに落ちるシーン、急斜面を転げ落ちるシーン、アザラシを襲って食べるシーン、亡骸が雪に埋まっているシーン、体力がなくなってフラフラになっているシーン、殴られているシーンなど「これはどうやって撮影したんだ??」というシーンが山ほどあります。
ムツゴロウさんのチャトランの映画でも問題になりましたが、気になって気になって感動どころではありませんでした。この映画の撮影に際し、犠牲になった動物・病気や怪我をした動物が一匹もいない事を祈ります。

・展開
2時間24分、犬だけで画がもつんかいな?と思っていましたが、とんでもない。あっという間に時間が経って全く飽きなかったです。どこかで「この映画は人間を丁寧に描きたい」という制作者の話を見たのですが、半分くらいは犬だったような気がします。むしろ美しい夏目雅子さんには申し訳ないですが、婚約者のくだりはカットしてもっと犬多めでもよかったと思います。
犬パートは小池朝雄のナレーションが入ります。淡々と犬達の状況を説明してくれて、犬が息絶えると名前・年齢・出身地のテロップが出ます。とても心が痛みます。人間は結果だけしか分からないので、犬パートは完全に想像という事になりますが、犬が走って歩いて寝転んでいるだけで心にグッとくる私は犬達の身に次々と襲いかかる自然の猛威・仲間達との別れでキャパシティオーバーになり、途中からはTwitterを見ながらでないと画面を直視できない状況になりました。

・キャッチコピー
後でWikipediaを見たら
>>キャッチコピーは、『どうして見捨てたのですか なぜ犬たちを連れて帰ってくれなかったのですか』。
と書いてあって愕然としました。
この映画を見た人達みんなが思う事を、こんなに堂々とキャッチコピーにするなんて一周回ってすごい。

・なぜ置いてきたのか
先述のとおりどうやって撮影したのかが気になって、動物達が可哀想で人間のことなんてほぼ覚えていません。正直なぜ犬達を置いてきたのかもはっきり覚えてないのですが、よく思い出すと確か南極観測船「宗谷」に帰る軽飛行機に乗る時に重量制限があって犬は乗れなかった事と天気が悪くて何回もは飛べなかった事、また、そもそも当初はすぐに戻る予定(第二次越冬隊に引き継ぎ)だったはずがそれもダメになり急遽全員帰国することになったためと記憶しています。この時高倉健さんが、自分だけでも犬の所に行かせてくれと頼みましたが「飛べる天気ではないしまず水も燃料も尽きた」と、上長が許してくれませんでした。誰も置いてこようと思って置いてきた訳ではなく、天候などのせいで不幸が重なった結果置いてくる形になってしまった格好です。
でも雌のシロ子と産まれたばかりの仔犬たちは連れて帰ったので、みんなの荷物を少しずつ諦めるとか、多少無理してでものせて帰れなかったのかと思います。

衝撃的な映画ですが日本映画史に燦然と輝く不朽の名作であり、起こった出来事はほぼ実話であったという事は紛れもありません。歴史の記録としても貴重ですし、良くも悪くもこの様な長編映画は今後作成できないため、後世に残すべき映画だと思いました。
なお現在は、南極条約によりもともと南極に生息していない動物の持ち込みは一切禁止です。史実との相違点など、知れば知るほど面白いので映画を見て興味が湧いた方はWikipediaを是非読んで欲しいです。
犬が好きで好きでたまらない人は心が壊れるかもしれませんのでじゅうぶん注意して視聴された方が良いと思います。