Shiori

カフカ 田舎医者のShioriのレビュー・感想・評価

カフカ 田舎医者(2007年製作の映画)
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3年くらい前に大学の授業で観た作品.

とにかく不気味な物語だと思う. 最初、この物語を読んだとき、なにを言いたいのかはもちろんのこと、内容すら上手く捉えることができなかった. 授業で「夢の論理」という言葉を目にして納得した. しかしこれは、夢以上に気味が悪い. アニメーションは、私の最初の「田舎医者」に対するイメージを、はるかに超えていた. まるで、悪夢でも見ているかのようだった.

アニメーションの中で、不思議に思った点二つを私なりに解釈してみる. 一つは、医者が独り言を言う時、影のような二人が登場する点. 私は、この二人を医者としての心情と人間としての心情のように思えた. 医者として、患者を助けなければならない. しかし、その患者の薔薇色の傷を通してローザの身の危険、つまりもう一つのSOSを人間として感じずにはいられない. 二人の影は、これら二つのSOSに対する葛藤を、抽象的に示唆しているのだろう.

二つ目は、医者が「死にたいぐらいだ」と心の中で思った時、医者の顔が馬に変わる所と医者が裸で馬に乗っている時に顔が馬丁に変わる所である. これは、不条理であるがゆえに、夢の論理の一部と言ってしまえばそこまでのことだ. しかし、馬や馬丁は医者の分身のようなものなのではないだろうか. 馬は患者のもとへ行く思いであり、それと同時に現れた馬丁はローザを傷つける種をもつ自分自身. 馬を使えば、馬丁はローザを傷つける。つまり、悪いことはそれだけで現れるのではなく、何かにくっついていて、一つのことを取ったがゆえに成長してしまう種もあるのかもしれない.
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