ケンヤム

青春の蹉跌のケンヤムのレビュー・感想・評価

青春の蹉跌(1974年製作の映画)
4.8
こんなにも爽やかな殺人映画があるのか。
「青春の殺人者」を観た時もそう思ったけれど、エンドロールを見て納得。
脚本が長谷川和彦だった。

主人公にとって、司法試験も恋愛も階級闘争の手段に過ぎなかった。
あの司法試験に落ちまくった先輩のようにならないためにも彼は司法試験に受からなければならないし、金持ちの娘と結婚しなければならない。
徹底的にこの映画では、女や家庭といったものを鎖のようなものとして描いている。
彼はそれから逃げようとすればするほど、その鎖から逃げられなくなっていく。
青春の殺人者の水谷豊はそこから逃げ切った男だったが、この映画のショーケンは無残にもこの鎖に絡め取られてしまう。
だから、彼はあのスピーチの後フラつくのだと思う。
計画通りのはずなのに、彼はどんどん不自由になっていくのだ。
だとすれば、最後の唐突な死は救いでもあるのではないか。
死ぬことで、彼はこの世から逃げることができたのだから。
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