Maiki

アダプテーションのMaikiのレビュー・感想・評価

アダプテーション(2002年製作の映画)
4.3
《脚本家チャーリー•カウフマンの葛藤》

 【Story】
 この映画、全てが予想外。かつてこんな脚本を書いた人がいただろうか。おそらくいたとしても作品にした人、ましてや映像化した人などいないであろう。
 これは、脚本家チャーリー•カウフマンが自身のことを描いた物語。それだけではなく、この映画の脚本自身がこの映画の中で描かれていく。
 この映画の脚色をする場面を描いた映画なのだ。

 ある小説を題材とした映画化の脚色を依頼されたチャーリーはその話が映画としてつまらない為、自分自身を映画に登場させることに。その誰も予想できない結末とは。。

 またこの映画の不思議な点がもう一つ。
実際にアカデミー賞でノミネートされた名前の中に『ドナルド•カウフマン』がいる。この映画の脚本を務めるチャーリーの双子の弟であり、エンドクレジットでも名前が記載されているのだが、彼は実在しない。架空の人物なのである。だが知らずに見ていると、現実に存在するのではと錯覚し、調べて初めてその事実に驚かされる。どこまで奇才なのだカウフマン。

 だが本作はただのぶっ飛んだ映画なのではなく、カウフマンとスパイク•ジョーンズなりのメッセージが隠れている。
 双子の弟であるドナルドはチャーリーとは正反対の性格を持った人物。きっとこれがカウフマンの理想の姿なのではないだろうか。自己嫌悪に陥り続けたカウフマンが作り上げた理想の自分。『ファイトクラブ』のプラピの様な存在であったのかもしれない。
 
 また本作は「映画とはなんなのか」といった万人が問い続けた問いについても触れている。
 映画とは作る側のメッセージを観客に伝えるもの。それは娯楽と言った『面白さ』なのかもしれなければ、『哲学』的なものかもしれない。だがどれだけ伝えたいものもつまらなければ見られない。
 途中から本作はチャーリーの自己嫌悪から、ドナルドの描く様なぶっ飛んだ展開に移り変わっていく。映画は必然的に大衆向けでなければ、多くの人にまず見られない。そこに製作陣の伝えたいことを組み込む難しさ。
 それを分かりやすく織り交ぜたのが本作『アダプテーション』なのではないだろうか。

 社会に『適応(Adaptation)』し始めて、作品は受け入れられるのだ。それは人間としても同じ。終わりよければ全て良しなのだから。。
Maiki

Maiki